太陽と月の距離
憤慨(番外編)















「嘘だろぉぉぉ…………」





佐助は仕込みの最中に盛大な溜め息をついた。




「おいおい……佐助……負のオーラ出し過ぎ」



才蔵には佐助の周囲の空気は澱んで見えた。




「旦那が彼女連れて来るんだよ!?平静でいられるわけないでしょうが!」

「あの奥手で純な幸村さんが恋愛出来たんだから喜んでやれよ〜」

「喜べないよ!!大体さぁ〜、歌舞伎町で一目惚れした女だよ!?それも喧嘩っ早くて携帯持たせるような束縛心の強い女だよ!?ロクなもんじゃないでしょ!」



(お前は1人息子を持つオカンかよ……)



「旦那も何でそんなのに惚れちゃうかなぁ〜!?『某の大切な方をお連れするからよろしく頼むぞ』なんて頬を染めながら言われたって冗談じゃないよ!」




頭を掻きむしる勢いで悶える佐助を見て才蔵は苦笑いをした。



「携帯の番号を教えてくれるわけじゃないし、何か話してくれるわけでもなく、『今日は晩ご飯はいらぬ』って笑顔で言うだけでデートなのか何してきたのかも報告しないし!」

「ははは〜……」



才蔵は渇いた笑いしか出てこなかった。




(親心というか……幸村さんも大変だなぁ〜………っていうかコイツもか………そして………)




才蔵の視線の先には、怒りの矛先を向けられたキャベツがあった。



無惨にも見事な千切りキャベツの山盛りが出来上がっていった。




「もぉぉぉ〜!!」




軽快なテンポで包丁の音が響き続けた。




「………っていうかテメェいい加減にしろやぁぁ!!」




才蔵の怒鳴り声が落ちた時には既に4玉のキャベツが犠牲になっていた。







そして…………





今日のオススメメニューは、


豚カツとお好み焼きに決まった。

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