番狂わせ
祭の後は後の祭り






「花火大会いいなー誰かと行きたいなー」
横目でチラチラ確認しながら世良がぼそりと呟いた。


「あんな人混み、行くもんじゃねぇよ」
「えー!屋台とか楽しいじゃないっすか!」
「屋台だぁ?」
意中の堺が反応してくれたとこまでは世良の狙い通りだったが、
禁句を発してしまったがために堺の表情は極悪なものに変わった。

「ち、ち、違うっす!!食べないっす!マジっす!!」
「本当かよ?どうせクレープとかチョコバナナとか甘いもん食うんだろ?」
フン、と呆れたように世良を見下ろす。

「いや・・・・チョコバナナは堺さんに食べて欲しいんで・・・・」
「あ?んなもん食うかよッ」
「あ、いや、何でもないっす!!」
世良は妄想が声に出ていて慌てた。

「でも、俺、浴衣着て行きたいなぁ・・・・」

世良の頭の中では、
浴衣姿の堺、チョコバナナを咥えたり、はぐれないように絡めた指先
花火を見上げうっとりとする横顔
暑さで乱れた胸元、色気の増したうなじ
人目を盗んで顔を寄せた・・・・



「浴衣なんて面倒くせぇもんよく着たがるよな」
「え!!雰囲気出ていいじゃないっすか!!」
世良は妄想の世界から戻ってきて興奮のあまり声が大きくなる。


「でも、着方が分かんないっすけどね!!」
「・・・・は?」
世良の清々しさに堺は目が点になる。

「分かんねぇって意味が分かんねぇんだけど?」
「え!!超ムズカシイじゃないっすか!?」
「何が・・・?」
世良の目が輝く程に、堺の視線は冷ややかになる。

「堺さん、もしかして着付け出来るんすか?」
「女に比べりゃクソみてぇに簡単だろ」
「マジっすか!!すげぇ!堺さんって何でも知ってるんすね!!」
「別に大したことじゃねぇだろうが」
「じゃあ、女の人の帯とかも締めれたりするんすか?あの変な形のやつとか」
「まぁ・・・」
「すげぇ!すげぇえー!!」
世良は何とかすれば『浴衣姿の堺』という夢が叶いそうでテンションが上がる。
そんな世良の羨望の眼差しが鬱陶しくもあり、気恥ずかしくなって堺は視線を逸らした。



「堺って生々しいくらいにいやらしいな」
「あぁ!?」
「何言ってんすか丹さん!!堺さんすげぇじゃないっすか!」
通りすがりの丹波は半笑いだ。

「いいか、世良・・・・」
「ウス」
丹波は世良の肩に腕を回す。

「女の浴衣の着付け方を知ってるってことは・・・・」
丹波は真剣な声色でしゃべるので、世良はゴクリと唾を飲み込んだ。


「浴衣の心配いらないから全部脱いじゃえよ☆ってことだろ!!!」
「ッ!!?」
「祭の後は2人で打ち上げ花火を上げようぜ?あぁ〜ん、イッちゃうぅううん!堺のエッチぃい!!!」
「〜〜〜〜ッ!!!!」
世良も堺も真っ赤になる。

「さ、さ、堺さんが、そんな、」
「んなわけねぇだろ!!!丹波テメェッ!!」
「だめぇぇえよしのり激しいぃぃいい〜」

調子に乗った丹波がシメられたのは言うまでもない。
それはもう、後の祭り。







13.07.27
×××××××××
隅田川の花火大会にちなんで。
今年はETUから見ることが出来ませんでしたね。

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あきゅろす。
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