戦国
熱病(政+佐)











「池の氷の上に乗って、氷が割れて池に落ちて、風邪引いた?プッ………ハハハッ!」

「全く……政宗様の悪ふざけはいい加減にして頂かないと」




成実は政宗の失態をケラケラと笑い、小十郎は主君の容態を案じる気持ちと呆れた気持ちで溜め息が零れた。




「…………はぁ………」




枕元で好き勝手言う従者に言い返す元気すらない位、政宗は熱に浮かされていた。




「ま、梵は池に落ちた位で死ぬような玉じゃねぇし大丈夫だろ?」

「安静にして下っていれば熱も下がるだろう」

「鬼の霍乱ってやつだな」



(成実……ぶっ飛ばす………)



愉快でたまらないといった感じで笑う成実を、朦朧とした意識の中で政宗は呪った。















─────


「…………」




どれくらい眠っていたのだろうか。


汗で貼り付いた前髪を鋤く、冷気を纏った誰かの存在に政宗は意識が戻った。




(心地いい………)




体温の高い政宗には、額に置かれたひんやりとした手が癒しとなった。




細い指先は額から頬へ、そして唇をなぞったり、慈しむように政宗に触れていった。




(kiss…………?)




唇に柔らかな感触が伝わり、口付けされたのだと理解した。




(甘い…………)




何か液体を口移しされ、政宗の喉は自然と上下した。








「………ゆっくりお休み…………竜の旦那────」






聞き慣れた響きのある声…………










「────……佐助?」




目を開き視線を動かして部屋を見渡すが、当然なのかもしれないが、誰の姿もなかった。




「………Shit………」




力の入らない怠い体を起こした。



幾分熱は下がったのだろう。
気分は楽になっていた。





「………夢か……」




障子から射し込む光の強さは、陽が高い時刻であるのと


庭一面が白銀の世界だからだ………







『奥州の雪が解ける頃、会いに来るよ………』




そう言い交わした言葉が頭に浮かんだ。



奥州の雪は深いので、あの忍であっても辿り着くことは容易ではないし、ましてや風邪を引いた時期など分かるはずもない。




「Ha!弱った時に無意識で求めちまったってことかよ」



政宗は己の女々しい一面を鼻で笑った。





「けどまぁ……………悪かねぇ夢だったな………」




















─────


「はっ……くしょん!!」

「む?風邪か?佐助」

「あぁ〜………かもね」




佐助は悪寒の走る体を擦った。



「全く!数日姿を見せぬと思えば風邪などと………」



(だって………奥州の雪とか寒さとか尋常じゃないんだもん………

ホントは春まで我慢するつもりだったけど、俺様の熱い想いが雪を解かしちゃった!みたいな?)



佐助は冬の厳しさを思い出して身震いをし、抑えきれなかった衝動につい口元が緩んでしまった。




「修行が足りぬ証拠だな!よし!服を脱げ!」

「はいぃぃっ!?」

「乾布摩擦をすれば、風邪などに負けぬ心と体が培われるのだぞ!」

「いや、俺様特製の効果絶大な風邪薬があるから大丈夫だよ!」

「薬などに頼らず精進あるのみっ!!」

「ちょ、旦那、嘘だろぉぉ!!?」











さて、武田式風邪撃退法によって、佐助の容態は良くなったのか?悪くなったのか??















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凛がインフルさんにかかって悲惨だったので、突発で書きたくなった病気ネタでした。

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