戦国
新年
「旦那〜………新年なんだけど何する?」
「うぅ〜む………」
幸村と佐助は悩んでいた。
「とりあえず目出度いから何でもありみたいなんだけど?」
「何でもか………」
「そう言われてもねぇ〜?」
「何でもと言われては………」
幸村は立ち上がった。
「これは是非とも政宗殿に一肌脱いでもらわなければならないな!」
「え?結局人任せ!?」
「ふふ………何でも許されるのだろう……?」
「ちょ、旦那!?何か黒いよ!!」
佐助は主の笑みは危険だと、本能で察知した。
「新しい年に釣り合うよう新しい趣向を取り入れてみるかな………」
「旦那!!待ってぇ!」
部屋を出ようとした幸村を後ろから羽交い締めにして止めようとする佐助。
「竜の旦那に何かあったら俺様が右目の旦那に殺されるぅ!!」
「自分の命くらい自分で守れば良かろう?」
「ひ……ヒドッ!!」
佐助はさらりと述べる主に泣きそうになった。
「Hey!俺が何だって?」
「おぉ!政宗殿!」
「ぁぁあ………」
佐助は『飛んで火に入る……』という言葉が頭に浮かんでしまった。
「新年の祝い事に政宗殿に一肌脱いで頂こうかと思いまして」
「俺?」
「えぇ」
幸村の人懐っこい笑顔に何の警戒心もなかった。
「───竜の旦那ぁ!逃げて!」
「What!?」
「佐助ッ!!」
佐助は政宗を抱き上げて、幸村の手から逃れた。
「何だ!?おいっ」
「しっかり掴まっててね!」
「Ha!……ハハッ」
政宗は何が何だか意味が分かっていなかったが、揉め事であることは分かったので、楽しそうに笑った。
「佐助を取り抑えろッ!!」
屋根を駆け逃げる佐助達に刺客(?)が差し向けられた。
「長っ!幸村様の命だから伊達殿をお返し下さい!」
「冗談じゃないってーの!!」
煙幕を張って距離を稼ぐ佐助。
「何だ………幸村は何か企んでんのか?」
「竜の旦那の貞操がかかってんの!」
「そんなに………」
抱き上げているから自然と政宗の顔が近くにあり、佐助はドキッとした。
「そんなに俺を守りたいのか?」
「っ────」
耳元で囁かれた熱っぽさに佐助の下腹部が反応し、体はぐらついた。
「………竜の……旦那……」
佐助は葉で身を隠すように木の枝に舞い降りた。
「幸村より………俺を選んでくれるのか?」
政宗は佐助の頬に手を添えた。
「そういうわけじゃないけど………俺は竜の旦那が………」
「…………」
佐助は政宗の手に己の手を重ねて唇を見つめた。
「………」
口付けを交わそうとした瞬間………
「………佐助………哀れだな」
「ッ!?その声……うわぁ!」
佐助は身構える間もなく、鎖網に包まれてしまった。
「お前………才蔵!!」
「ははは〜、お疲れ」
「………はぁ〜……俺様としたことが見破れないなんて」
目の前にいるのは変化を解いた才蔵で、佐助は溜め息をついた。
「おぉ!佐助は捕まったか!」
「あ、幸村さ〜ん」
「旦那………」
幸村は佐助の姿を見て笑顔で近づいてきた。
「ふふ………才蔵よくやったな!見事な変装だったぞ」
「え………ちょっ………何それ?俺様謀られた!?」
「佐助………お主の気持ちはよく分かったぞ」
「ッ────」
佐助は体の血が一気に引くのが分かった。
「佐助…………主の命というものをその体にしっかり教え込まねばならぬな!」
「あはは………旦那………嘘だろぉ」
満面の笑みに黒い影がちらついて見えた気がした。
新年から佐助一人を陥れる作戦は成功に終わり、
佐助は己の主の底知れぬ恐ろしさを身を持って体感したのだった。
「佐助………哀れだなぁ………」
才蔵は時折響く悲痛な叫びに苦笑いしてしまった。
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新春一発目の小説です!
今年1年の行く末を暗示している内容ですねぇ。
黒幸政、黒幸佐、佐政、佐←才(?)な1年になるでしょう。
そして、結局ギャグに落ち着くのだったぁ〜。
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