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出来たらもう少しこのまま(グリ→イエ)




ああほらまた失敗した。

そしたらきっとまた涙目で謝り出す。
…勘弁してくれ。
あいつの為に泣くお前を見るのなんてもう、こりごりだ。




「……また、失敗しました…」




ほらやっぱりきた。

落ち込んで、伏し目がちにうつ向きながら泣かないようにと必死になって瞳に涙を溜めている。
そして必ず上目で俺の様子を伺いながら少し躊躇いがちに謝るんだ。



(…確信犯かよ)



その方がまだマシだと頭の隅で考えながら、その馬鹿正直な少女を叱ることができない自分に呆れた溜め息を洩らす。


「…次はしっかりやれよ」


悩んだ末にかけた言葉は、我ながら、らしくない。


それでも、安心したように笑って、はい申し訳ありませんでした…なんて言うから、まぁいいかなんて思ってしまう。



(たちが悪い)

これが恋だのなんだの言われるものだとしたら、この上なくたちが悪い。


「すみませんでした」

ぺこりと頭を下げて戻っていく後ろ姿の、揺れる黄色のポニーテールに手を延ばしてみる。

届かずに空をきったてのひらが中途半端に浮いたままで、軽く溜め息をついてその腕を下ろす。










(…たちが悪い)














もう一度胸中で呟いてから、彼女の去っていったその先に視線を向ける。

彼女の視線は真っ直ぐに未来を見据えていて、きっとその先の未来にはあいつが隣にいるんだろう。

その真剣な瞳には、強い決意が見える。
さっき半泣きで落ち込んでいた姿とは別人のように違う、凛とした姿に目を奪われる。






(たちが悪い)







なんだってこんなにも不毛な思いを抱いてしまったんだろう。

もう何度目かもわからない溜め息を吐き出しつつも考えるのは、いつでも彼女が笑っていてくれたら、というささやかな願い。




(たとえ、お前の隣にいるのが俺じゃない誰かでも)



なんだか父親になったような気分だ。
そんなふうに思って、自分の想像に呆れてしまう。

どこまで不毛なんだ。






つよくなりたいんです。と、真剣な眼差しで俺に告げたイエローを思い出す。

未だどこかで戦い続けるあいつに、守ってもらわずに済むように強くなる、と言った揺らぎのない瞳が今も瞼に焼き付いている。




(…まったく、たちが悪い)




彼女の笑顔も泣き顔もあいつへの思いから生まれているなら、その一つ一つに翻弄されている俺は一体なんなんだ。



―――ばかみたいだろうが。






そしてまた、深く長い溜め息を吐く。



この、どうしようもなくたちが悪い思いに区切りをつけられるのは一体いつになるだろうか。




風に揺れるポニーテールに目を奪われながら、まだまだ続きそうなこの不毛な片思いに何らかの終わりを告げるなら、その役目は出来たら彼女であって欲しいと願って空を仰いだ。








END



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