広い野原に手足を投げ出して寝転ぶ。
そんなところで眠ったら汚れませんか、と君が首を傾げて尋ねるから、へいきだよと笑って答えて目を閉じた。
春の匂いを帯びた風が柔らかく鼻先をくすぐって通りすぎるのを感じて、ゆっくりと深い息をする。
閉じていた瞳を開くと抜けるように青い空を背に、目を閉じて膝を抱えて座っている黒髪の少女の姿がやけに眩しく映った。
汚れない?と笑いながら尋ねると彼女も微笑んで、へいきです、と言った。
「…綺麗だね」
ええ、いいお天気で良かったと軽く頷いて言う君を指さして、君のことだよと言ったら、急に変なことを言わないでと顔を背けた君の耳が赤くなっているのを見つけて、本当に君は可愛いひとだなと今度は心の中で呟いた。
さぁ、次に君が振り向く前にどんな言葉を言ったらいいかな、なんてくすりと笑ってみたあとに、照れ屋な君が微笑んでくれるとびきりの言葉を探しながら、もう一度仰ぎ見た空は相変わらず青く青く澄んでいた。
END