二人一組
結局、宿題は『手伝う』ことになった。
宿題は自分でやるものだから、『写させる』訳にはいかない。
初めはふて腐れた大輔も、八神さんが説得したらすぐ折れた。
──わかりやすい奴…
「賢、三角形の面積ってどうやるんだ?」
彼は今、算数ドリルの復習ページで詰まっている。
「底辺×高さ÷2」
「底辺……どれだ?」
本気で理解してないらしい彼に、「これ」と指さししてやる。
──底辺くらい覚えておけよ…
ため息ついて、向かいの机を見た。
「タケル君、この漢字間違ってるよ?」
八神さんが高石君のノートを指さしたところだった。
「あぁ、ホントだ!」
高石君が笑って八神さんを見ると、八神さんも微笑んだ。
大輔が聴いたら怒るだろうけど、二人は仲が良い。
──バカップル
そんな言葉が浮かんで消えた。
「そういえば、一乗寺くんは宿題とりに行かなくていいの?」
高石君に向けた笑顔のまま、八神さんが僕に問いかける。
大輔じゃないけど、彼女は可愛いと思う。
「あぁ、僕はもう全部終わってるから。あとは夏休みの日記を書き上げるだけ」
それに反応して、大輔がガバッと顔を上げる。
「なにぃ〜!?後5日もあるんだぞ!」
「5日しかない、でしょ?こんなに溜め込むなんて」
はぁ、と高石君がため息をついた。
「何だよ!タケルだって終わってねぇじゃん!」
「高石君はほとんど『終わってる』よ。大輔、君はほとんど『終わってない』んだから集中しような」
僕がなだめるように言うと、八神さんも口を開いた。
「一乗寺くんの言うとおりよ。大輔くんが一番危ないんだから」
「うぅ・・・ヒカリちゃんまで」
大輔は観念したように鉛筆を握りなおした。
「まぁ、分からない所は僕が教えるから。高石君たちは二人でやっててくれるかな?」
「なに!?二人で!賢、それは」
「ほら、ここも間違ってるぞ」
大輔が言い切るまえに指摘する。
高石君たちが笑いあうのがわかった。
大輔には悪いけど、こうするのが一番効率がいい。
でも、なんでかな?
高石君と八神さんを見ていると、大輔を見てるのとは違う意味でため息が出そうになるんだ。
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