小説 3
潜入捜査は危機だらけ・11
数学準備室に入ってすぐ、阿部は三橋に、制服を脱ぐように言った。
「そ、そんなつもりじゃな、くて、今日は……」
三橋は扉の前で立ち止まり、そんなことをゴニョゴニョ言ったが、阿部はまるで聞いてない。
「ここでヤッたら、さすがに丸聞こえだぞ」
そう、耳元で色っぽく囁きながら、紅いリボンタイをしゅっと引き抜く。
「その趣味の悪い女の服なんか、早く脱げっつてんだよ。お前は、何も着てねーのが一番キレイだ」
「な、き……」
キレイ、なんて。男が言われたって嬉しくない。
顔を赤くした三橋にくすくすと笑いながら、阿部は三橋の腰を抱き込み、口接けた。たちまち深くなるキスに、三橋はまっすぐ立っていられなくなって、阿部の胸に縋る。
しっかり持っていたハズのカバンは、いつの間にか足元に転がっていた。
ウェストがふっと軽くなり、スカートのホックが外されたと分かる。と同時に、すとんとスカートが緩まり、床に落ちた。
あ、脱がされる。
そう思った時……。
コンコンコン、と、真後ろのドアがノックされた。
三橋はとっさに逃げようと、窓を見据えて身構えた。けれど、阿部がしっかりと三橋を捉え、逃がそうとしなかった。
それどころか、「はい」とか返事して、ドアを開けるよう促してる!?
「失礼します。阿部せんせ……」
ドアを開けた女教師は、目の前の阿部と三橋の姿を見て、ひっと息を呑んだ。
無理もない。だって彼女に背を向けて、阿部に縋ってる三橋は、スカートを床に落としているのだから。
三橋の方も、「ひえっ」と悲鳴を上げて、床にしゃがみ込んだ。
昨日と同様、ボクサーブリーフの上に黒のスパッツを重ねている。スカートをはいていなくても、下着は見えないが……。
諸事情により、座らずにいられなかった。
「あ、あなたこんな所で何をしてるの! 早くスカートをはきなさい!」
女教師が、鋭い声で三橋を叱咤する。
「座り込んでないで! 早く立って、スカートはいて! いやらしい!」
ヒステリックに叫ぶ女は……美術教師だ。
どう見ても責めるべきは阿部なのだが、彼女は顔を赤くして三橋を罵った。
けれど、そんな美術教師を黙らせたのは、阿部の冷たい言葉だった。
「うるせーな、ぎゃんぎゃん喚くんじゃねーよ。何の用?」
低い不機嫌そうな声に、美術教師はびくっと黙った。そして口調を変え、おずおずと甘えるような声を出す。
「あ、あの。阿部先生。もしお暇だったら……」
「暇じゃねーよ。見りゃ分かるだろ、お取込み中だ」
阿部は女教師の言葉を遮り、床にうずくまる三橋をひょいと抱き上げた。
背中に殺気を感じる。
今朝教室で感じた、クラスの女子の殺気より黒い。
けれどそれも一瞬で……。バタン、と思い切りドアを閉めて、彼女は走り去って行った。カツカツと靴音が遠ざかるのを聞いて、ほう、と息を吐く。
ドアに鍵をかけてから、何がおかしいのか、阿部がくっくっと肩を震わせた。
おかしいところなど何もない。むしろ、阿部にとってはよくない状況なんじゃないのか? 放課後の数学準備室で……女子生徒と二人きり、しかもスカートを脱いでいた、なんて。
いくら校長や理事長が、三橋が男だとか生徒じゃないとか知っていても、変な噂が広まってしまえば……立場が悪くなるんじゃないのか?
阿部はそれでもいいのだろうか?
「あ、の。お、下ろして」
三橋は取り敢えず、阿部の肩を押して床に下りようとした。
しかし、阿部は「何で?」と言って、三橋を肩に担いだまま、スパッツ越しに触れてきた。
「ふ、やっ」
じたばたと抵抗するが、勿論放して貰えない。
「立てって言われたって、立てる訳ねぇよなー? いつからこんななったんだ? キスから? それとも、ここに来る前からか?」
阿部のに比べて大きいとは言えないが、16歳男子としてはごく標準サイズで……スパッツの上からも、はっきりと分かるくらいには、形を変えてしまっていた。
「少しは期待してる?」
三橋の耳元で意地悪く囁き、スパッツごと一気に下着を引き下ろす。
白い椅子に三橋を座らせた阿部は、ブラウスを自分で脱ぐように命じて、自分は三橋の前にひざまずいた。そして、じらすようにゆっくりと、その股間に顔をうずめた。
そこからはもう、阿部の思うがままだった。
座ったままでも、立ったままでも、前からも後ろからも貫かれた。
喋れなくなるくらい、ぐずぐずに溶かされて、時々意識が暗黒に呑まれそうになるのを、恐れつつも悦んだ。
そういえば、報告があったんだと……三橋が思い出したのは、阿部に近くまで送って貰う途中の、車の中でのことだった。
(続く)
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