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小説 3
Pick&Choose・前編 (高3・彼女あり・なれそめ)
※オリキャラが出ます。苦手な方はご注意下さい。



 甲子園で活躍する前から、三橋は女子に人気があった。
 まあ、そうおかしい事でもねぇ。
 あいつ、がっついてねぇし、むしろ赤面症だし、女子には「さん」呼びすっし、物腰も柔らけーしな。
 何かとトロくせー感じすっけど、実はスポーツ万能だし、その上、エースだし。
 だから引退した後、あいつにすぐ彼女が出来たのも、別に不思議には思わなかった。
 ただ一つ不思議だったのは……何であんな、ウゼー女を選んだのかって事だ。


「三橋、宿題やった? 今日当てられんでしょ? チェックしてあげっから、ちょっと見せて」

「あー、このノート、新品じゃん! 紙で大事な指ケガしたらどうすんの? 使う前に、よーく慣らしなさいっつったでしょ」

「昨日、電話の後、すぐ寝たの? ちゃんとハミガキした?」

「あ、またこんなスナック食べて! 食べ過ぎはダメって志賀センセ言ってたじゃん。ほら、オカラクッキー作って来たから! あんま市販品ばっか食べないでよ?」

「昼間は薄着でいいけど、もう秋なんだよ? 夕方から冷えるんだから、薄手のパーカーか何か、上に羽織んなきゃ」


 こんな感じで朝から晩まで、三橋の彼女は三橋の周りを付きまとい、何だかんだと世話を焼いて回ってる。
 オレからしたら「ウゼー」の一言しかねーけど、三橋はってーと満更でもねぇみてーで、世話焼かれっ放しになっていた。
 おまけに、満面の笑顔で礼まで言ってんだ。
「ありがとう、矢部さん!」

 まあ、三橋がいーんならイイけどさ。
 その様子見てっと、何でかな、スゲームカつく。
 オレが仏頂面で眺めてると、泉が意地の悪そうな笑顔で言った。

「矢部って、阿部にそっくりだよな」

「はー? どこが? オレぁあんなウザくねーし、あんなタレ目でもねーし! っつーか、似てんのは苗字だけだろーが」
 すると今度は、田島が言った。
「へー、自覚ねーんだ?」
「自覚って、何の自覚だよ?」
 問い返すと、田島の代わりに泉が答えた。
「お前だって、引退する前まであんな感じだったっつの。命令口調なだけに、ウザさ100倍」
 田島も言った。
「三橋も、世話焼かれんのに慣れちまってっからさー。突然なくなると寂しくなっただろうし、ま、丁度いーんじゃね?」


「んだよ、それ?」
 それじゃ、まるで、世話焼いてくれんなら誰でもいいってことじゃねぇ?
 そんなの、動機が不純じゃね?


 むーっと黙り込んでると、泉がオレを肘でつついた。
「三橋のことぁ放っといて、お前も誰かと付き合えばいーじゃん。知ってんぞ、しょっちゅう告白されてんだろ」
「あー、まあな」
 確かにそうだ。中学じゃ全然だったけど、オレ、高2の途中からやたらモテ出した。
「いいなって子、いねーの?」
 面白そうに訊かれても、「さあな」としか答えようがねぇ。

 っていうか、誰にも言ってなかったけど、春休み前に3日くらい、女と付き合ってたことあんだ。
 いや、3日ってのは、付き合った内に入んのかな?
 とにかく、「三橋君と私と、どっちが大事っ?」つってヒステリックに訊かれて、「三橋」っつって即答したら、殴られたんだけど。
「あー、そうだなー」
 もう三橋ともバッテリー解消したし、三橋はあれでも楽しくやってそうだし。
 世話焼くこともなくなったんなら、「三橋君と私と……」なんて訊かれる事もねぇか?

 ぼんやり眺める目の前では、矢部が三橋のでっかい口に、自分の作ってきたでっかい唐揚げを放り込んでいる。
 イルカか何かの餌付けショー見てるみてーで、その和やかっぷりに、余計イラつく。

「オレもカノジョつくっかな」
 そう言うと、今まで散々けしかけて来てたくせに、泉と田島は顔を見合わせ、肩を竦めた。

(続く)

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あきゅろす。
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