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小説 3
皇孫一の宮の略奪・6 (前半R18)
 獣みてぇに四つん這いにさせた皇子を、後ろから貫く。
 皇子はいつもより高く啼き喚き、白い背中をくねらせる。
「あーあーっ、ああーっ」
 イヤイヤと首を振りながら、必死で両手をふんばる皇子。オレはその細腰を掴んで引き寄せ、小刻みに揺すった。
 皇子は、オレに抱き縋れねぇってんで、この体位をあんま好まねぇ。
 けど、こうして後ろから攻めた時に、一番乱れんのを、オレはよく知っていた。

 乱れる皇子が見たかった。
 誰にも見せてねぇ顔。オレしか知らねぇ声を。

 こんな、男に貫かれて、淫らに啼き喚く皇子なんて、頭の中将は知らねぇだろう。
 御所の人間だって。
 弟宮だって。
 春宮だって、今上帝だって。
 都の昔の知り合いは、誰も今のこいつを知らねぇ。

 知らなくていい。上等だ。
 誰にも見せねぇ。どこにもやらねぇ。
 オレだけの皇子だ。オレだけの!

 思いを叩きつけるように、上下に、前後に、激しく揺する。
 小刻みに速く。呼吸より速く。
「あ、ああーっ、も、もうっ、オレ、オレっ」
 皇子が恥じらいもなく善がり、「ああっ」と一声上げて、射精した。
 尊い胤が板の間に飛び散り、オレに突っ込まれてる穴がきゅうっと締まる。
 それに引き絞られて、オレも皇子の体内に出した。

「くそっ」
 けど、まだ足りねぇ。
 攻め足りねぇ。もっと啼かせてぇ。
 無茶苦茶にしてぇ。
「好きだ」

 がっくりと床に伏した体を、ほら、と促して仰向けに転がす。
 皇子はもう、朦朧としてて、オレに縋りつく力もねぇ。
 オレも息が整わねぇ。けど、構わず腰を動かす。
 ゆっくりと、深く穿つ。
 穴だらけにしてやる。
 オレのものだ。オレだけの。

 皇子が両手をゆっくりと上げ、オレを求めた。
 首に巻かれた腕に、引き寄せられるまま口接ける。
「好き……」
 皇子が静かに、甘く告げた。



 頭の中将は、幼馴染なんだと皇子は言った。
 一番仲の良かった友達だった、と。
 けど、彼の姉が春宮に入内し、やがて弟が産まれて……自然に疎遠になったんだと。

「何だ、友達より家を取ったんか」
 営みの後、寄り添って眠る布団の上で。柔らかな髪をなでながら、軽蔑したように言ってやると、皇子はオレの胸に顔をこすりつけ、「仕方ないよ」と小さく言った。
「貴族って、そういうものだ、よ」
「はん、盗賊の方が、よっぽど情に厚いぜ」
 皇子はふひっと笑って、「そう、だね」とうなずいた。
「キミが貴族じゃなくて、ホントに、良かった」

 じわっと、心に言葉が染みる。
 オレは皇子に愛されてる。
 ………愛されてる。



 そっから夏の間、しばらく都には行かなかった。
 都のあちこちで、夜通し護摩を炊いたり、読経をしたりってのが流行ってたからだ。
 そんなんじゃ、盗みにも入りにくいし、入ったとしても逃げにくい。

 二の宮の病状は、一進一退のようだった。
 馬鹿げた事に、それは一の宮の亡霊が祟ってんだろうって、噂になってた。
 一の宮の霊を鎮める為に、毎日毎晩、読経や祈祷が行われてんだとさ。
 マジ、バカバカしい。
 祟るどころか……弟の病気、スゲー心配してるってのに。
 大体、死んでねーし。

 けど、その一方で。あちこちの村を、都の役人がうろつくようになっていた。
 何でも、一の宮を捜し歩いているらしい。
 大人は勿論、子供たちにも訊くそうだ。
「高貴な方を知らないか?」
 見たこともねぇような、甘い菓子を差し出して。

 そっちの噂に……皇子は怯えた。

(続く)

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