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小説 3
皇孫一の宮の略奪・4 (前半R18)
 弓を与えた翌日。
 いつもなら、メシの匂いでもしねー限り目ぇ覚まさねぇ皇子が、鶏よりも早く起きた。
 夜具の中からそーっと抜け出そうとすっから、細腰を掴んで引き戻す。
「どこ行く?」
 組み敷いて詰問したら、弓の練習がしてぇとか言う。
「んな暗くてできねーだろ」
「う、だ、って、眠れない」
 嬉しくて興奮したって。子供かっつの。

「眠れねーなら、他に何か、することあんだろ?」

 口接けると、薄い唇が求めるように開いた。舌をねじ込めば、小さな舌が、遠慮がちに差し出される。
 甘い唾液。ぬるい吐息。
 一方通行じゃねぇ。口接けが深くなれば、両腕がオレの背に、縋るように回される。
 オレは舌を絡めたままで、脇から腰、そして太ももに手を這わした。
「んっ」
 塞いだ唇の下から、熱っぽい声が漏れた。

 内股は、寝る前に、オレが出したもので湿っていた。
 入れやすいように、と穴に指突っ込んでぐるっと回したら、ぐぷっ、とかイヤらしい音を立てて、そこがひくついた。
 欲しがって、ねだってるみてぇ。
 思わず、ぷはっと笑うと、皇子が顔を覆って「やあっ」と言った。
 暗くてよく分かんねーけど、多分真っ赤だ。

「スゲー好きだぜ、皇子サン」

 優しく囁いて、グッと腰を落とすと、皇子の体が弓なりに反る。
 オレの形を覚え始めて、オレ専用になってる場所が、ねっとりとオレを迎え入れた。
 どこがイイかとか、どこを突けば乱れるかとか、オレの方もだいぶ分かって来た。
 高貴な皇子を、劣情で汚す背徳感。
 オレに貫かれ、オレに揺さぶられ、オレに縋り付いて、口開けっ放しで、アンアン啼きっ放しの皇子は、そんな乱れてもどこか高貴でぞくぞくする。

「気持ちいーか?」
「気持ち、イイっ」
 上擦った声で応えられると、ホントなんだと信じたくなる。
「オレが好きか?」
「ん、大好、きぃ」
 尋ねりゃ、必ず皇子はそう応える。
 床の中の睦言だけど、ホントなんだと信じてぇ。

 けど、昼間、繋がってねぇ時に……そう訊く勇気はまだなかった。




 村人数人と森に入って行った皇子は、見事な牡鹿を仕留めて来た。
「動くもの狙ったの、初めてだ、けど。一発で当たった、よ」
 皇子は嬉しそうに言った。
 狩りに行く前、村外れで練習してるとこ見たけど、自信あるっつっただけあって、上手いもんだった。
 印をつけただけの小さな的に、連続でどんぴしゃに当たるんだ。
 はた目にも、相当練習したんだと分かった。

 貴族にとって弓や剣は、漢詩や楽器と同じく、たしなみの一つなんだとか。
 一人でできるから、弓の練習ばかりやってたんだっつーのは、成程、取り巻きのいねぇ一の宮らしい。
 けど、狩りに出たのは始めてだったようだ。
 そもそも、貴族のたしなみに、狩りは入ってねーんだろうか?

「あのね、普通は、鷹狩りなんだ、よ」
 皇子が言った。
 鷹狩りってのは、飼い慣らした鷹にウサギや何かを捕って来させる狩りの事だ。
 つまり狩りをすんのは鷹であって、人間は何もしねぇ。
 そんな狩りのどこが楽しいんだ、と訊くと、皇子も「さあ?」と首をかしげた。
「だから、弓とか、狩りに使わないんだ」

 使う相手はヒトなんだよ――。

 皇子はそう言って、ふひっと笑った。
 敵を思い、戦に備える。それが、貴族のたしなみなんだと。

(続く)

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