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小説 3
皇孫一の宮の略奪・1 (前世悲恋もの・R18)
 盗賊にさらわれ、尚且つ体まで奪われた夜――。
 皇子は静かに涙を流した。
「な、んで、こんな、こと……?」
 訊かれたって、答えようがねぇ。
「欲しかったから、だろ」

 仏事に訪れた菩提寺で、盗賊に出会ってしまった不運な皇子。
 そいつは本来、御所の奥に大切に置かれてるハズの、皇孫だった。
 白い、高貴な肌。匂い立つような髪。
 大きく見開いた、至高の玉瞳。
 見た瞬間、欲しいと思った。欲しいものは奪ってでも手に入れる。それが盗賊だ。
 だから、さらった。だから抱いた。それだけだ。

 なのに、自覚がねぇんだろうか。
 寝乱れた寝具の上、白い裸身を晒した皇子は、少し考えて、もっかい訊いた。
「何、が、欲しかった、の?」
「はあっ?」
 思わず大声を出すと、皇子はびくりと身を竦め、顔を庇うように両手を上げた。

 やべぇ、怖がらせちまったか。
 ちょっとだけ反省する。
 けど、こんくらいのことでビビるなんて、やっぱ皇子サンはお育ちが違ぇんだな。

 オレは苦笑しながら、皇子の上に覆いかぶさった。
 ついさっき、オレにそうやって汚されたばかりの皇子は、ひっと小さく息を呑んだ。両腕で顔を庇ったまま、目と口をギュッと閉じる。
 その細腕を難なく引き離し、顔の横に縫い付けて、高貴な顔を覗き込む。
 市井には有り得ねぇ、透けるような白い肌。
 オレを恐れてわななく睫毛。
 甘い匂い。

「あんたが欲しかったんだよ、皇子サン」

 囁いて、薄い唇に口接けると、皇子は何故か、驚いたみてーに目を開けた。
「オレなんか、に、価値ない、よ?」
「はっ」
 驚きを通り越して、呆れてしまう。
 だって、皇孫の一人、しかも長子、一の宮なんだろうに。
 大体こんな、男をとろかすような甘い匂いしてるくせに、無価値なんて事、ある訳ねーし。
「何それ、下らねー誤魔化し言ってんじゃねぇ!」

「う、ほ、ホントだ、よ!」

 意外に強い口調で言われ、オレは鼻白んで手を放した。
「ホントに、オレなんかに、価値は無い、んだ。キミも、きっと、すぐに分かる」
 皇子はオレを見たままで、けどどこかぼんやりと、遠い目をした。
 嘘を言ってる風じゃねぇ。
 こいつは、マジで、そう思ってる。思い込んでいる。
 どういう事情があんのかは、知った事じゃねーけど……。せっかくの戦利品を「無価値だ」って言われて、いい気はしねぇ。


「あんたの価値はオレが決めてやる」
 オレは皇子の目を真っ直ぐに見て、きっぱりと宣言した。
「キミ、が……?」
 問い返してくる皇子の、白い脚を押し開き、さっき穿った秘所に触れる。
 そこはまだ、オレの形を覚えてて、オレが放ったばかりの精で溢れてた。
 皇子の全身が、びくりと震えた。

 皇子は、自由になった手を口元に当て、顔を横に逸らし、目を伏せている。
 羞恥か屈辱か。白い頬を薔薇色に染めて、そっと息を殺してる。
 もう何をされるか、分かってる。
 ほら、その証拠に、皇子の陰茎は、期待に震えて張り詰めてる。
 ははっ。笑えて仕方ねぇ。

 ……期待にゃ、応えなくちゃな。

 オレは再び、皇子の体を貫いた。
「あうっ」
 皇子が悲鳴を上げた。
 けど、さっき聞いたみてぇな、悲痛なんじゃねぇ。
 どこか甘い。
 芯から嫌がってそうじゃねぇ。
 それとも、そう感じんのは、願望かな?

「あんたをオレのモンにしたかったんだよ。こうやってオレのをぶち込んで、無茶苦茶に揺さぶって、オレの思うままにアンアン啼かせて、頭ん中、オレでいっぱいにして。オレの事しか考えらんなくしてやりてぇんだ。おキレイなあんたが、オレの下で乱れ狂うの見れたら、オレはスゲー嬉しいよ」

 オレはそんなこと延々囁きながら、皇子の体を何度も何度も可愛がった。
 だって、わざわざ奪って来た宝だぜ。愛でなくてどうするよ?
 皇子は息も絶え絶えになりながら、オレに訊いた。
「嬉し、い?」
「嬉しーよ」
 あんたにゃ、そんくらいの価値はあるんだぜ。

 そう言ってやると……皇子は、うっとりとした顔で、気を失った。

(続く)

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