小説
巻いて巻いて…(りんご様リクエスト)
「ギルー!見て見てー!」
貰った戦利品を貪り食べているギルに向かって、何かが走って来る。
辺りは闇夜なので、良く見えない筈だが、それは良く見えた。
白く細い布を全身に余す所無く巻いた、人形の"何か"
しかも、それが猛スピードで此方へ向かって来る。
「く…来るなぁぁ!」
張りぼての甲冑を身に纏ったギルは持っていたレプリカの剣を振り回し、訳の解らぬ「何か」を追い払おうとした。
「わわっ!危ないなぁ!俺だよお、れ!」
顔に巻かれている布をいくらかほどき、目の前の「何か」は古代の亡者に扮した悪友の顔を見せた。
見覚えのあるその顔にギルは思わずその場にへなへなと座り込む。
「…コリコか、脅かすなよ。」
「別に脅かしてないよ!それよりさ、これ見て!」
コリコはカボチャのランタンを象ったバッグをギルの前に威勢良く突き出す。
中を覗けば、南瓜味をはじめとした渦巻きの菓子が沢山敷き詰められている。
「飴ばかりじゃないか!しかもペロペロキャンディー…。」
そう、コリコが貰ったお菓子は皆ペロペロキャンディーだった。
それらがバッグの中に所狭しと入っている光景は目を回しかける程圧巻だ。
「嬉しいけど、どうしてかな?皆俺を見ると必ずこれくれるんだよね。」
コリコは南瓜味の飴を取り出しながら疑問を口にする。
「タガーに聞いたら、『皆お前の格好を見て思い付いたんだろう。』って言ってたし。」
飴を舐めながらも唸り始めたコリコの様子を、ギルは改めて見る。
ミイラ男に扮する為に、身体中に包帯を巻いた彼と、ぐるぐると渦を巻いた飴。
「両方共、巻く。か…。」
「ん?」
ギルの呟きに口から飴を離したコリコだが、その言葉の意味を知ると、「あ!」と叫んだ。
「まさか、シャレ…?」
「面白い事を考えるなぁ。皆も。」
ギルが声を出して笑うと、続いてコリコも笑い出す。
皆の遊び心がけ詰まったペロペロキャンディー達が、静かにそこ光景を見守っていた。
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