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船長とご対面


しばらくチョッパー君と話していたら、だいぶ気が楽になった。
ここは船の中で、仲間達と共に旅をしているらしい。
チョッパー君はこの船の船医として仲間になったのだそうだ。
俺のことを気遣ってか、チョッパー君は自分が体験した楽しいことばかりを話してくれた。
それを聞いていると、俺の記憶もそのうちパッと戻ってくるような気がした。


「チョッパー君はいろんな所に行ったんだな」
「ここにいると退屈しないぞ!皆優しいし、毎日楽しいんだ」


俺はいつの間にか砕けた口調で話していた。
チョッパー君が敬語をむず痒そうに聞いていたから変えたのだが、こっちの方が断然良い。

その時、ドアが勢いよく開けられた。
バンっと大きな音がする。
思わずチョッパー君の手を握ってしまった。


「おぉ!何だ、元気そうじゃねーか!」


ドアを開けたのは麦わら帽子をかぶった少年だった。
俺より年上だろうか?
いや、そもそも俺は何歳なんだろうか?


「ルフィ!ユエをおどかさないでくれ!」
「ユエってのかお前」
「は、‥はい…」


小さいチョッパー君の背に隠れるように縮こまる。
全然隠れられてないのだが、こうする以外どうしようもない。
青年―…ルフィさんは「にししっ」と笑いながら俺に近づいてきた。


「俺はルフィ、この船の船長だ」


船長。
その肩書きが偉い人のモノだということは理解していた。
まだ子どもに見えるのに、船長なのか。
純粋にすごいと思った。


「お前、何だかよく分かんねぇけど、困ってんだろ?」


澄んだ黒い目と視線が合う。
裏のない表情だった。

困っている、と言われたら、確かに困っている。
自分が何者であるかも分からない状況で、困らない人間はいないだろう。
俺が小さく頷くとルフィさんは「よし!」と手を叩いた。


「ユエ!お前、全部思い出すまでここにいろ」


それは、清々しいまでの笑顔だった。


「俺達が助ける!」


この少年が船長なのが、納得できるような気がした。











「にしてもユエ、何で何にも覚えてねーのに自分の事男だと思うんだ?」


ルフィさんは男物の服を持ってきながらそう言った。
俺が、女物の服が嫌だと言ったら、持ってきてくれたのだ。


「いや‥よく分かんないんですけど、体と感覚が噛み合わないんです…女の子の格好してると、変な感じがして……」
「そうか、なら仕方ねーな」


「ほら、これなら良いだろ?」と何枚か服を広げる。
どれも全く違うタイプの服だった。
一つはルフィさんの服と同じ形のものだ。
後のはルフィさんの物には見えない。
でも確かに男物だった。

その服の中の一枚に目が止まる。


「じゃあ、これを…お借りします」


直ぐに着替えようと、ナミさん達に着せられていたシャツのボタンに手をかける。
揺れる乳房にゾッとしたが、見ないフリをしてシャツを脱いだ。
女物の下着を着けさせられていないのが救いだ。
チョッパー君が「ユエっちょっとは気にしないと!」と何やら焦ったように言う。
そこで、初めてルフィさんに胸を見られていることに気づいた。


「んー、やっぱりお前、体は女なんだな」


さっきと少しも変わらぬ様子で、ルフィさんが言った。
女の体を見た男の反応とは思えなかった。
ルフィさんがあまりにも平然としているので、何だか俺がおかしいような気がしてくる。

俺は急いでルフィさんから受け取った服に着替えた。
そんな俺を見て、ルフィさんがニカッと笑う。


「似合ってんぞ!ゾロとお揃いだな」


俺はその格好で医務室から出ることにした。




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あきゅろす。
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