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照れ屋で可愛い




何も覚えてない。
思い出せない。
でも、俺は女じゃない。男だ。
なぜかそれだけは自信があった。
と言うより、自分が女であることに違和感を覚えるのだ。
どうにも気持ちが悪い。
視線を下ろすと、あるはずのない胸がその存在を主張していた。
触るとふにゃり、と柔らかい感触。思わず背筋に鳥肌が立った。
下半身にあるべき男の象徴は影も形もないのだろう。
流石にそこは恐くて触れなかった。
こんな体、俺じゃない。
俺なわけがない。
自分の感覚と、体が全くと言って良いほど噛み合わない。


俺はベッドの上で深いため息をついた。

これから俺はどうなるのだろう。
俺は海に落ちていたらしいけれど、誰かに捨てられたのだろうか。
そう思うと、何も覚えてないくせに胸がズキリと痛んだような気がした。
不安でしょうがない。
もう少し寝ていた方が良いとは言われたが、とても眠れるような状態ではなかった。

二回目のため息をつくと、コンコンとドアをノックされた。


「ユエ、入っても良いか?」


チョッパー君だ。
俺は直ぐに返事をして、胸までシーツを引き上げた。
今更かもしれないが、こんな気持ちの悪い体を誰かに見られるのは嫌だと思った。

ドアが開いてチョッパー君が入ってくる。
ちょこちょこと歩く姿が可愛いと思った。
チョッパー君は何歳くらいなのだろう。
普通の人間と背丈なんかを比べると、チョッパー君は幼児並みだ。
でも頭まで幼児だったら俺の怪我を治療するなんて事は出来ないだろう。


「ちょっとは落ち着いたか?」


つぶらな瞳が俺を見つめてくる。
胸の奥がきゅん、とした。
非常に…可愛らしい。
でも俺より大人かもしれないチョッパー君(勝手に君づけしているが)に、面と向かって可愛いとは言えなかった。
あと、ピンク色の帽子から突き出た角(本物?飾り?)を触りたくなったが、それも我慢した。


「はい、さっきよりは…だいぶ…でも、やっぱり何も思い出せないんですけど…」
「その、無理に思い出そうとしなくても大丈夫だぞ!次の島までまだ時間はたくさんあるし、島に着いたら着いたで何か手がかりがあるかもしれないしな」


チョッパー君が一生懸命に俺を励ます。
きっと部屋の前で言うことを考えてくれていたのだろう。
チョッパー君はスラスラと言葉を紡いだ。
その優しさに、思わず顔がほころぶ。

「ありがとう、チョッパー君」


心からお礼を言うと、チョッパー君はへらりと顔を崩し、照れたように笑った。
「そそそ、そんな事言われたって全然嬉しくなんかねーぞコノヤロ〜」と、何だかとっても嬉しそうに言っていた。


―…チョッパー君とは直ぐに仲良くなれそうだ。






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