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蒲公英


あれから数日たち、彼女(佐藤さん)のことも忘れかけていた。なんの変化もなくただ日常を生きていた、そんな時。


「高崎さーん」


遠くで満面の笑みを浮かべて俺に手を振る女性は誰だ。あぁ佐藤さんとかいったっけ。もう8時近いし暗い。


「おい呼んでるよ」
「どう反応すればいいんだ俺は」
「取り合えず手振っとけば」


今日も俺の部屋に泊まる気らしい春を軽く殴ってから、小さく頭を下げた。俺はこの人苦手なんだ。


「どうも」
「どうもー、今帰りですか?」
「そうですけど」
「私これから友達と飲みに行くんですけど、一緒にどうですか?」
「いや俺は「行く!!行くよな蓮」


テンションが高い春に勝手に話を進められて、内心ムカッとしたが、あぁそういやこいつ飲み会好きなんだと思い出してため息が出た。俺は下戸ではないけど酒が苦手だ。ちょっとなら平気なんだけど、酔っ払うと人に絡むらしい。酔いが冷めた時、俺には記憶がないんだからいい迷惑だ。


「…春」
「三浦さんもこう言ってることですし」


ちなみに三浦ってのは春の名字だ。力いっぱい春を睨みつけてから、小さくじゃあと言って歩き出す。春の野郎、後で見てろ。



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