蒲公英 2 あれから数日たち、彼女(佐藤さん)のことも忘れかけていた。なんの変化もなくただ日常を生きていた、そんな時。 「高崎さーん」 遠くで満面の笑みを浮かべて俺に手を振る女性は誰だ。あぁ佐藤さんとかいったっけ。もう8時近いし暗い。 「おい呼んでるよ」 「どう反応すればいいんだ俺は」 「取り合えず手振っとけば」 今日も俺の部屋に泊まる気らしい春を軽く殴ってから、小さく頭を下げた。俺はこの人苦手なんだ。 「どうも」 「どうもー、今帰りですか?」 「そうですけど」 「私これから友達と飲みに行くんですけど、一緒にどうですか?」 「いや俺は「行く!!行くよな蓮」 テンションが高い春に勝手に話を進められて、内心ムカッとしたが、あぁそういやこいつ飲み会好きなんだと思い出してため息が出た。俺は下戸ではないけど酒が苦手だ。ちょっとなら平気なんだけど、酔っ払うと人に絡むらしい。酔いが冷めた時、俺には記憶がないんだからいい迷惑だ。 「…春」 「三浦さんもこう言ってることですし」 ちなみに三浦ってのは春の名字だ。力いっぱい春を睨みつけてから、小さくじゃあと言って歩き出す。春の野郎、後で見てろ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |