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京七小説

会場に入ってすぐ、恋人たちはお互いを見つけました。
「緋真」
「白哉さま」
緋真はすぐに恋人のもとに駆け寄るかと思われましたが、さにあらず。
彼女が駆け寄ったのは七緒の所でした。
緋真は親友の手をとって言いました。
「ありがとう。七緒ちゃん。一人だったら、絶対ここに来る勇気が出なかった」
うるんだ瞳で自分を見つめる緋真に七緒は言いました。
「緋真ちゃん。だめよ。今泣いたら、お化粧が崩れるわ」
「七緒ちゃんたら、ほんとにしっかりしてるんだから」
女たちは見つめ合ってくすくす笑いました。


招待客をかきわけてやってきた白哉は
緋真を守るように、その腰に手を回すと七緒に礼を言いました。
「緋真をつれてきてくれてありがとう」
「お礼なら、こちらの方にも」
「ああ、もちろん」
白哉は京楽のほうに向きなおりました。
「あなたにも感謝を。卿がお二人と旧知のなかとは知りませんでした」
「僕も白哉君がこんな美人と婚約していたとはしらなかったよ」
京楽の「婚約」という一言に、近くにいた招待客がどよめきました。
白哉が言いました。
「私の誕生日に日付が変わった後、発表する予定でしたから」
「おや、これは失言だったかな」

ですが、これは逆によかったのです。
情報通と見られたい社交界の人たちは、
この婚約の話を元から知っていたように振舞いました。
私は白哉様ご本人から聞いた、私は奥様から聞いた、と噂にたちまち広がっていき、
別の人との婚約発表をしてしまおうという
大奥さまのもくろみは崩れ去ることとなったのでした。

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