京七小説 6 「いるよ。どうぞ」 京楽の返事をきいて、執務室に予想外の人数がなだれ込んだ。 八番隊だけではない。人事をきいた壱番隊や他隊の渉外担当者が列をなしている。 そういえば総隊長だものね。他人ごとのように七緒は考える。 一目でめんどくさい事態であることを見通したらしい。 京楽は逃げにかかった。 「皆、ごめんね。ぼく、46室の召喚に備えて精神統一を計らないと」 「隊長!こんなときに昼寝なんて止して下さい」 七緒の魂の叫びはヘラっと笑って流された。 「さっすが七緒ちゃん。ぼくのことわかってるう」 「こんなの、わかりたくありませんよ」 「じゃあ、あとはよろしく」 「あ、隊長」 取り囲まれていたせいで、初動が遅れる。ピンクの着物は七緒の手をすり抜けて窓から消えた。 「逃げられた。こんな近距離だったのに」 窓枠に手をついて荒い息を吐く七緒だったが、口の端から徐々に笑みが広がった。 困った隊長さん。最後の日まで、サボろうとするんですね。 なら、私は追いかけるまでです。 七緒はメガネの位置を直し、室内の面々に向きなおった。 「ご心配なく、すぐに連れ戻しますので。皆さんで仕事の順番決めておいてください」 [*前へ] [戻る] |