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エスケイプ アンド ハイド7

「そういうことか。だったら、さっきのダズの行動の意味もうなずける」

 ダズが己に刃を向けてきたこと。それも、自分を敵と見なしてのことなら納得できる。そもそも彼ははじめから言っていたのだ。信じてなどいない、と。

「ダズのことはあまり気に病むな。あの行動は彼の意志じゃない。ライトによる『支配』の影響だ」

「『支配』?」

「ライトの能力だ。対象の意志を乗っ取り、自分の意のままに支配できる力。味方ならともかく、敵に回すとおっかねえ能力だよ。ダズは今、その支配下にある。だからあの時、容赦なくお前に襲いかかってきたんだ」

「一体どうすればいい」

「他人がライトの支配を解く方法はない。ライト自身が術を解くか、より強い力で術を押さえ込む他方法はない」

「……そうか」

 ダズの意志ではない。そうティズイヴは言ったが、その言葉をそのまま受け入れることは出来ない。『支配』下になかったといって、彼が刃を向けることはないとは言い切れない。排除すべき敵と見なされれば、彼はきっと刃を向けることを躊躇わない。

 なんにせよ、ダズは敵側へと回ってしまったのだ。

「本来なら、レオがお前とダズを北方へと向かわせたのはお前を驚異から逃すためだった。レオは仲間であるはずの西国のハンターが敵に回る可能性を見越していたんだ」

 満足に力も使えず、再び暴走するリスクもある。にもかかわらず任務へと向かわされたレオの判断は早急とも思えたが、裏側にそんな意図があったとは。

「しかし結果として奴等はその上をいっていた。ピンポイントで任務に向かったお前たちを狙ってくるとは。してやられたって感じだよな。まったく」

 やるせなく息を吐き出すと、ティズイヴはおもむろに胸ポケットから煙草を取り出した。オイルライターが火を打ち出す小さな発火音ののち、独特の煙たい香りが空間を充たしていく。

「お前を逃がしたライトたちが城へ向かうのも時間の問題だろう。そうなったら、全面的な戦いは避けられない。ライトもギルも実力は相当のもんだ。下手すりゃあっという間に攻め込まれてお仕舞いだ」

 ディルは静かに息をのんだ。じわじわと足下が侵食され、脆く崩れ落ちていくようだった。逃げる為の羽は穿たれ、周囲を埋め尽くすのは奈落。わずか残った足場もそう保たずに壊れていくのだろう。そうなってしまえば、あとは落ちていくことしかできない。這い上がるすべも、飛び立つ手段もない。 

「大丈夫だ」

 掌の大きな温もりが、再びディルの頭を包む。

「そうならないために、お前をここに連れてきたんだから」

 その手を払いのけて、見上げた先には笑顔。堂々たる、絶対的な自信に溢れたそれは、嫌でも安心感を植え付ける。

「ようし、それじゃあ行くか。ついてきてくれ」

 煙草の火を消すと、ティズイヴはいよいよといった様子で通路を進み出す。




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