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エスケイプ アンド ハイド6
 ティズイヴはその力によって雪国からこの地下通路までを瞬時に移動し、ライトたちから逃げ切ったのだ。

「この通路はその昔軍が使っていた非常通路でな。今はもう使われていない、知る人ぞ知る秘密通路だ。現役の軍人でこの場所を知ってるやつなんざほとんど居ねえし。ろくに整備もされず朽ち果てたこの道を使おうなんてやつはそれより少ねえ。こんな通路がこの国の地下、至る所に張り巡らされてるって言ったら信じるか?」

 にわかには信じ難いが、口振りからしてそれは事実なのだろう。使われなくなってから長い間整備がなされていないようではあるが、作りそのものは堅牢かつ立派なものだ。

「全長でいうと数千キロはあるだろうな。途方もないが、確かに事実だ。その昔この通路を発見したときは胸が躍ったな……仕事なんてほっぽりだして隅々まで探検したもんだ」

 ティズイヴはすっかり思い出に浸り初めてしまった。弾む声が沸き起こる浪漫を物語るが、今はそれどころではないことを思い出して、横道に逸れ駆けた軌道を修正する。

「と。脱線するところだったな。それで、なんの話だったか。そうだ、行き先だったな。これからお前を連れて行くのは、この先にある軍の本部だ」

「本気で言ってるのか……?」

 ティズイヴの言葉は先ほど以上に信じ難く、耳を疑うものだった。

 軍の本部。それはまさしく、敵地のまっただ中ではないか。ティズイヴという存在があるものの、ハンターにとって軍は今や信用ならざる相手。ライトたちから逃げるためとはいえ、より危険な場所に赴く必要はない。それならば城に戻ったほうが正しい選択だといえるはずだ。

 城に戻れない理由があるわけでもない??そこまで考えて、確信めいた嫌な予感が過ぎった。

「今回のお前の救出は、レオからの頼みでもあった」

「レオの?」

「ああ。お前を助け、しばらくの間保護するように。とな」

「保護だと? どうして」

「お前を襲った相手が何者か考えれば分かるだろう」

 ディルははっとする。襲いかかってきた相手、それは隣国のハンターであり、同じ目的のもと戦う仲間同士のはずだった。しかし彼らはディルという存在を敵とみなし、刃を向けてきた。それが意味することは。

「ハンターという組織も、もう味方とはいえない……?」

「言ってしまえば、そういうことになるな」

 だとするなら、城に戻ったとしても安全であるとはいえない。少なくともレオやメルベル、ディーナは味方と思って良いだろうが、他はどうか分からない。




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