人魚の雫
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波がザザア、と引く音。
海猫の鳴き声。
少年の顔を照らす朱い西日。
「───♪────♪」
声変わりも終えていない、幼い男の子の歌声が響く。
それにそっと耳を傾ける少年。
天使のような歌声が、青年にさしかかる前の少年の鼓膜に優しく届く。
波辺で並び座る彼らを、夕日が照らし。
二人の繋がれた手をさらす。
幼い男の子の足から先には、青白く光る綺麗な鱗があり、それはまるで魚のそれだった。
少年の足から下にはすらりと伸びたふたつの足があり、陸の生き物であることを示していた。
二人は違う世界に住みながら、少しの間同じ時間を過ごしていた。
それはとても幸せなもので、二人は凪いだ海のように穏やかで暖かい気持ちだ。
二人の髪を、そよそよと海風がなでる。
天使の男の子の歌声が止み、少年に向かってほほえみが向けられる。
それにほほえみ返して、少年はそっと男の子を抱き寄せた。
悠久の幸せ。
それを感じさせる光景。
穏やかな波が、押し引きを繰り返す。
ザア、ザア。
ザア、ザア───。
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