今日も変わらず地球は回る 覚悟:1 初詣でを済ませ、仁王は彩音をマンションまで送っていった。 だが、朝になれば彩音はイタリアへと発つ為、仁王は離れがたい気持ちでいっぱいだ。 それは彩音も同じで、二人は抱きしめ合ったまましばらく離れずにいた。 「すぐに帰って来るから」 「帰ったら連絡するんじゃよ?」 「うん」 「じゃあ、無事に行って来れるように…」 おまじないな、と言って額と頬と唇にキスを落として帰って行った。 「……雅治……好き…」 ふわふわと、体も心も浮いているような気がする。暖かい。とても暖かくて……切なくなる。 彩音は、この暖かさを逃さないように、ぎゅっと自分の体を抱きしめた。 イタリアに着いた彩音を迎えたのは、ジュリオだった。 『パーティーもう始まってるよ』 『そう。じゃあそっちに直接行くのね』 『うん』 新年を祝うパーティーは、親戚だけではなくヨーロッパ内のグループの幹部も集まる正式なものであり、彩音も後継者として出席しなくてはならない。 それほど畏まる人達ばかりではないし、毎年の事なので緊張などはないが。 ホテルに着いてドレスに着替えメイクをし終えた頃、ジュリオが部屋へと迎えに来た。 会う度にどんどん綺麗になっていく彩音にドキリとさせられる。 『彩音、ドレスよく似合ってる。綺麗だよ』 『ありがとうジュリオ』 ふわりと微笑んだ彩音は、ジュリオが差し出した手を取って会場へと向かった。 扉が開いた先には、きらびやかな世界が広がっていた。 一般の人間ならば、その眩しさに足を踏み入れるのを一度は躊躇うであろう。しかし彩音は、凜と背を伸ばし優雅な仕草で躊躇うことなく足を進めていく。 慣れもあるかもしれないが、後継者という立場がそうさせているのもあろう。 ただジュリオは、昨年までの彩音とは少し変わったような気がしていた。この間、京都で会った際にも思ったが。 色々な人に挨拶に向かう彩音を見つめ、ジュリオは目を細めた。 『(キミを変えたのは……彼か…)』 京都で『付き合っている』と紹介された男――。 実は軽く嫉妬したが、それは一瞬のことだ。 何故なら、彩音はいずれ……。 『(覚悟を決めなくてはいけないよ、彩音)』 ジュリオは傍らのグラスを二つ手に取ると、両親と離す彩音の元へと歩を進めた。 (090920) [*←][→#] [戻る] |