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今日も変わらず地球は回る
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修学旅行3日目。今日も班行動で市内を回って、ホテルに戻って来た。
充実した時間を過ごすと、時の経つのがやたら早く感じる。
予定よりも少し早く戻った私たちは、空いた時間を女同士で話し込むことに費やしていた。

「もう明日帰りなんて早すぎるよねぇ〜」
「ホント。まだ帰りたくないね」
「帰ったら受験勉強地獄だよ…」

海里がげんなりして呟いた。
いくら内部進学と言えども立海たるもの、それなりの結果を収めなければいけないわけで。もちろん公立高校よりレベルは高い。
帰ったら、3年生は受験モード完全突入なのである。

「彩音はいいよね…頭良いし…」
「あのね、私だって勉強してるよ?」
「分かってるけどー。基本レベルが違うもん!」

ベッドにダイブした海里に苦笑を送って、そういえば何か飲みたくなったなぁと思った。

「私、飲み物買いに行ってくる」
「あ、あたしも行くー」
「じゃあ私も」

私に続いて桜と雪奈が立ち上がると、紅葉と海里も立ち上がり、結局全員で近くのコンビニに行くことになった。
そうなると、やっぱり飲み物だけで収まる筈がなく、籠の中にはお菓子も追加されることとなった。
そうして皆でコンビニを出たところで、ホテルの入口に雅治達がいるのが見えた。
少し遠いけど、あの集団はよく目立つ。

けれど、近付こうと一歩を踏み出した足を、思わず止めてしまった。

「……あれ、隣のクラスの子だね」
「あ、丸井君が声掛けられてる」
「……あ……」
「うん、雅治もだね」

ニコリと笑って言うと、桜が開きかけていた口をぱくぱくさせて気まずそうに私を見た。

そう。雅治や丸井くんは、それぞれ女の子と一緒に皆の輪から少し外れていった。
修学旅行という、非日常のイベントだから、ね。

「…気にしてないよ。予測済みだし」
「本当に気にしてないの?」
「ホントホント。さ、行こ」

心配そうな海里に笑いかけ、私は再び歩き始めた。

「まぁ仁王君て彩音にベタ惚れだしね」

そう海里が呟いたのが聞こえて、ほんの少しつきりと痛んだ胸のことには気付かないフリをした。



夕食の時間になり会場へ入ると雅治達も既にいて、私を見つけた彼が近づいて来た。
意識してはいなかった筈の、さっき見た光景が頭を過ぎり、上手く笑えなかった。

「…彩音、何かあったか?」
「え?何もないよ?料理、取りに行こ」
「…そうじゃな」

多分気付かれた。でも、これは私の感情の問題だし…。
雅治は、食べている時は皆がいたせいか、何も言わなかった。
夕食を終え部屋へと戻る中、エレベーターに乗ろうとした私の腕が引かれた。

「雅治?」
「ちと借りるぜよ」

桜達にそう言って、雅治は私を非常階段へと連れてきた。
背中は壁、両側には雅治の手。
逃げたりなんてしないのに…。

「様子がおかしいのは何でじゃ?」

直球で聞いてきた雅治の目は真剣で、その奥には少し不安の色が滲んでいるようだった。
トクンと鼓動が跳ねたのは、きっと私がすごくすごく雅治を好きで、大切で、失くしたくない存在なんだと思ったのと、雅治が本当に私を好きなんだと実感したからだと思う。

「…さっき、告白されてなかった?」
「え、何で知っとる…?」
「皆でコンビニ行った帰りに、女の子に声掛けられてるの見ちゃった」
「……」
「雅治の彼女だっていう自信はあるんだけど、やっぱりモテるなぁって思ったら……」
「それ、ヤキモチ?」
「…え?」

言われてはたと気付いた。そっか、そういうことかぁ。
思わず苦笑が浮かんで雅治に抱き着いた。

「うん、そう。私、結構独占欲強いみたい」
「彩音…」

雅治の腕が私を包んで、少しだけきつく抱きしめられた。

「俺は彩音だけのものぜよ?まこと、彩音は可愛すぎるのぅ」

ふっと微笑んだ雅治に私も微笑むと、温かくて優しいキスが降ってきた。



(090811)

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