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今日も変わらず地球は回る




夕食はフランス料理のコースで、マナー講座も兼ねていた。
フルコースではなく、メインはお肉1品のコースだけど、氷帝じゃあるまいし、フランス料理に慣れた子がそうそう沢山いるわけもなく、皆講師の人の話を聞きながら料理を口に運んでいた。
それでもそんなに堅苦しい講座ではないから、話しながらになる。
離れた席で丸井くんが「あーめんどくせー!」と声を上げるのが聞こえてきた。
それに対して別の場所から「丸井、たるんどるぞ!」と真田くんの声が上がる。

「……二人とも、煩いよ」

口調は優しく、小さく、だけどみんなに聞こえた精市くんの声でホールの温度が2度ほど下がった気がするのは、気のせいじゃなかったと思う。

「ふふっ…テニス部ってどこにいても一緒だね」
「ホントにのぅ」

思わず呟くと、近くの席だった雅治が苦笑して相槌を打った。



夜はもちろん外出禁止で、女子と男子のフロアも行き来禁止。
だけどロビーだけは開放されていた。

「あんなんじゃ食った気しねー」
「ブン太まだ食べる気?ホントにお腹がたるんでくるよ」
「まさにデブン太だな」
「うるせーよぃ!」

そんな会話を後ろに聞きながら、私と雅治は窓際で外を眺めていた。

「明日は班行動だね」
「俺は彩音と二人きりでも構わんがのぅ」
「……私も」

お互いにクスリと笑って指を絡めれば、じんわりと熱が伝わって身体中を駆ける。
依存してるんじゃないかってくらいに、私は雅治のことが好きらしい。

「おーい、そこの二人、そろそろ部屋に戻るよー」
「おー」

精市くんの声で振り向くと、皆はもうエレベーターホールの前にいた。
先に行くよ、と乗り込んで行った皆を追って、私たちもエレベーターの前に立つ。
程なくして開いたエレベーターに乗って、ドアが閉まった瞬間。

「彩音」
「んっ…」

キスされて、そのまま壁際に押さえられた。
離してくれる気配はなくて、深く入り込んできた雅治を受け止めるしかなく。
エレベーターが開いたらどうしようとか、頭の片隅にはあるのに、求められるままに応えていた。

「……あー、やっとキスできたぜよ」
「……ま、さはる、てば…いきなり…!」

唇を離した雅治が私を抱きしめ呟いた。
少し乱れた呼吸を整えて、理由を聞こうと雅治を覗き見た。
でも、あまりに優しい顔で見つめてくるから、何も言えない。

「今日の彩音が可愛すぎるからじゃ。ずーっと我慢しちょった」
「もう!だからってこんなところで…」
「すまんすまん」

もう一度軽く口づけた雅治は、忘れとった、と階数ボタンを押した。

……本当に、ドアが開かなくて良かったよ……。

男子の部屋の階で雅治と別れ、一つ上の女子の階に着いたエレベーターを降り部屋に戻るまで、身体も心もドキドキしてふわふわしていた。

「…彩音、顔赤いよ?あ、さては仁王君とイチャついてたな!」
「え、あ、その…」

部屋に戻っていた海里にビシリと指摘され、言い返すなんて出来るわけなかった。



(090722)

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あきゅろす。
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