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今日も変わらず地球は回る




「たのもー!」

海里がドンドンとドアを叩くと、呆れ顔の紅葉が現れた。

「うるさいなぁ」
「ね、外見たー?いい眺めだよ!」

部屋に入っていくと、雪奈と桜も寛ぎモード。

「見たよー。人いっぱいだよね」
「流石、京都だよね。じゃあ彩音、ここ座って!」
「え、また髪型変えるの?」
「もっちろん!」

ニコニコ顔の紅葉に鏡の前に座らされ、新幹線で結ってくれた髪を解かれた。
桜達はお菓子を食べながら談笑している。
鏡越しに四人を見て、また笑みが浮かぶ。

「彩音ってば、今日ずっと笑顔だね」
「だって本当に嬉しくて…雪奈が『皆で行くことの方が大切』って言ってくれたでしょ?それって本当だなって。もし皆がイタリアに行ってたら、私きっとこんなに楽しんでないよ」
「……彩音って……」
「ん?」

紅葉は鏡の中の私を見つめて、それから抱きしめた。

「可愛すぎるー!!」
「も、紅葉!?」
「わたしも彩音と修学旅行来れて嬉しいよ!よーし、気合い入った!」

そう言って私から離れた紅葉は再び髪を弄り始めた。
心の中が温かくなって満たされる。

友達って、いいな。



「はい、かんせーい!」
「すご…」
「もうプロの域よね」
「可愛いー!」
「わたしにかかればこんなもんよ」

フフンと胸を張る紅葉の言葉は伊達じゃないと思う。本当、一人じゃこんな髪型絶対ムリだって。
落とされた後れ毛がくるくる巻かれてふわふわ揺れてる。今の私の心と同じくらい軽やかに。

「ありがとう紅葉!」
「お礼はこの後!」
「え、なんで?」
「フフッ、いいもの見れそう」

紅葉と雪奈が笑い合った。
よく分からないけど、後で分かるのかな?

時間になったから夕食の場所へ向かうことになり、部屋を出た瞬間、廊下にいた立海の女子の視線を一気に集めてしまった。
この感じは覚えがある。

「海原祭の再来ね」
「あはは…」

雪奈の言葉に納得してしまった。
立海生で溢れるホールに着いても同じことになった。
満足そうな紅葉達に苦笑しつつホールを見渡す。
雅治達はまだかな?

「彩音、仁王君達来たよ」
「ほんとだ。雅治ー…?どうしたの?」

ホールに入って来た雅治を見つけたけれど、雅治はおろか、精市くん達まで私を見た瞬間足を止めた。

「……」
「雅治?精市くん?みんな?」

じっと雅治を見つめると、顔を覆って逸らしてしまったけれど、少し赤く染まった耳が理由を教えてくれていた。

「また紅葉にしてもらったんだよ」
「…びっくりした」
「うん」
「他の奴らに見せとうない」
「うん」
「そんなに嬉しいか?」
「うん」
「敵わんぜよ…」

言って繋がれた手に微笑むと、紅葉が勝ち誇ったように笑った。

確かに、こんなに照れてる雅治滅多に見ないもんね。ましてや人前だし。
いいものってこのことだったんだね。



(090704)

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あきゅろす。
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