今日も変わらず地球は回る 5 「たのもー!」 海里がドンドンとドアを叩くと、呆れ顔の紅葉が現れた。 「うるさいなぁ」 「ね、外見たー?いい眺めだよ!」 部屋に入っていくと、雪奈と桜も寛ぎモード。 「見たよー。人いっぱいだよね」 「流石、京都だよね。じゃあ彩音、ここ座って!」 「え、また髪型変えるの?」 「もっちろん!」 ニコニコ顔の紅葉に鏡の前に座らされ、新幹線で結ってくれた髪を解かれた。 桜達はお菓子を食べながら談笑している。 鏡越しに四人を見て、また笑みが浮かぶ。 「彩音ってば、今日ずっと笑顔だね」 「だって本当に嬉しくて…雪奈が『皆で行くことの方が大切』って言ってくれたでしょ?それって本当だなって。もし皆がイタリアに行ってたら、私きっとこんなに楽しんでないよ」 「……彩音って……」 「ん?」 紅葉は鏡の中の私を見つめて、それから抱きしめた。 「可愛すぎるー!!」 「も、紅葉!?」 「わたしも彩音と修学旅行来れて嬉しいよ!よーし、気合い入った!」 そう言って私から離れた紅葉は再び髪を弄り始めた。 心の中が温かくなって満たされる。 友達って、いいな。 「はい、かんせーい!」 「すご…」 「もうプロの域よね」 「可愛いー!」 「わたしにかかればこんなもんよ」 フフンと胸を張る紅葉の言葉は伊達じゃないと思う。本当、一人じゃこんな髪型絶対ムリだって。 落とされた後れ毛がくるくる巻かれてふわふわ揺れてる。今の私の心と同じくらい軽やかに。 「ありがとう紅葉!」 「お礼はこの後!」 「え、なんで?」 「フフッ、いいもの見れそう」 紅葉と雪奈が笑い合った。 よく分からないけど、後で分かるのかな? 時間になったから夕食の場所へ向かうことになり、部屋を出た瞬間、廊下にいた立海の女子の視線を一気に集めてしまった。 この感じは覚えがある。 「海原祭の再来ね」 「あはは…」 雪奈の言葉に納得してしまった。 立海生で溢れるホールに着いても同じことになった。 満足そうな紅葉達に苦笑しつつホールを見渡す。 雅治達はまだかな? 「彩音、仁王君達来たよ」 「ほんとだ。雅治ー…?どうしたの?」 ホールに入って来た雅治を見つけたけれど、雅治はおろか、精市くん達まで私を見た瞬間足を止めた。 「……」 「雅治?精市くん?みんな?」 じっと雅治を見つめると、顔を覆って逸らしてしまったけれど、少し赤く染まった耳が理由を教えてくれていた。 「また紅葉にしてもらったんだよ」 「…びっくりした」 「うん」 「他の奴らに見せとうない」 「うん」 「そんなに嬉しいか?」 「うん」 「敵わんぜよ…」 言って繋がれた手に微笑むと、紅葉が勝ち誇ったように笑った。 確かに、こんなに照れてる雅治滅多に見ないもんね。ましてや人前だし。 いいものってこのことだったんだね。 (090704) [*←][→#] [戻る] |