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3 #03
 まさか、な。ふと頭をよぎった考えをかき消す。流石に桜の精だなんて非現実的すぎる。
『お兄ちゃん、何難しい顔してるの?』
『ぇ、いや、何も?』
そういって顔を上げる。と、カノンが急に木の枝から飛び降りた。
『ぇ、ちょっ、危…ッ!』
カノンの座っていた枝から地上まで軽く3m位はある。死ぬような高さではないとは思うが、少なくとも普通なら怪我をする高さ、だと思────ぇ?
 信志の心配をよそに少女は音もなくうっすらと雪の積もった地上へふわりと降り立った。空から舞い降りる雪の華のように。
 『今日も来てくれたんだね、お兄ちゃん。』
カノンは何もなかったかのようににっこりと微笑む。それだけで僕の疑問は何処かへ押し込められてしまう。
『ぇ……あぁ。』
カノンは一層嬉しそうに笑う。本当は来るつもりなどなかったが、その事を言って純粋に喜んでいる罪もない少女を無理に悲しませることもないだろう。それに、それだけ嬉しそうにしてもらえるとこっちも嬉しくなる。


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