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その他の短編小説
C
 
 
 やわらかな午後の陽だまりの中で、僕は机に頬杖をつきながら、退屈な授業にぼんやり耳を傾けている。
 担当教授の講義は長いうえに退屈だ。
 ほんの好奇心からこの授業をとってみたけれど、やっぱり僕には向いてなかったらしい。
 (……眠い)
 睡魔と闘いながら何度目かの欠伸を噛み殺す。
 何気なく辺りを見回すと、僕と似たり寄ったりの学生たちが幾人もいた。中には堂々と舟を漕いでいる奴もいる。
 そんなことはお構い無しに、教授はますます熱弁をふるいながら、白いスクリーンに一枚の画像を映し出した。
 そこに写っているのは二匹の恐竜の化石。少し前に、ここよりはるか南のほうの国で発見されたものだ。
 「この二匹の恐竜の体がなぜ折り重なっているのか。研究者達の間では様々な推測がなされていますが、おそらくこの二匹が戦っている最中に何らかの事態が起こり、二匹はそのままの姿で地中に埋もれたという説が有力です」
 教授がそう説明する。

 その時だった。
 「あの、ちょっといいですか」 
 僕の斜め前方で、一人の女子学生がおずおずと手を上げた。
 「何ですか?」
 話の腰を折られて不愉快だったのだろう。教授の眉が神経質にピクリと上がる。
 「私思うんですけど、もしかしたらその二匹は戦っていたのじゃなくて、寄り添っていたんじゃないでしょうか?」
 「何ですって?」
 明らかに不機嫌な教授の声に、しかしその女子生徒はひるまない。遠慮がちではあるものの、澄んだはっきりとした声で、彼女はこう意見を述べた。
 「ひょっとしたら、二匹の恐竜は恋人か夫婦だったのかもしれませんよね?」
 「……」
 教室のあちこちからくすくすと笑いが起こる。
 教授の眉間に深い皺が寄った。その口元が皮肉そうに歪められる。
 「何ともロマンチックな見解ですが、残念ながら正解には程遠いようです。夢見がちなことを考えていないで、ちゃんと私の授業に集中してください」
 ぴしゃりと教授に言われて、その女子生徒は落ち込んだように項垂れた。

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あきゅろす。
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