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 私はまじまじと彼の美しい顔を見つめる。
 けれどやはり見覚えはない。
 (おかしいな。こんな綺麗な人、絶対に見忘れるわけないんだけどな)
 戸惑う私を見て、彼はますます口の端を吊り上げる。男のくせに、なんて色っぽい笑い方をする人なんだろう。
 「僕はカナタ。あの子たちの保護者みたいなものです」
 カナタ?……ん?どこかで聞いたことがある名前だわ。でも、いったいどこで聞いたんだっけ?
 曖昧な記憶をたどりながら、私がしきりに首をひねっていると、
 「あの子たちは、事情があって昼間はこうやって遊ぶことが出来ないんです。だから、せめて夜の公園で思い切り遊ばせてあげたくてね」
 そんなことを言う。
 「ほんの少しの間だけ、見逃してくれませんか?」
 そう言って、また魅惑的に微笑う。

 「……」
 私は思わず口をつぐんだ。
 何か深い事情があるようだが、初対面の人間がそんなことを訊いてはいけない気がしたからだ。


 そのままカナタさんと二人で、ブランコをこぐ子供たちを見つめていた。
 特別話すこともなくて、私たちはただ黙って並んでいるだけだった。

 しばらくそのまま立っていたのだが、
 「あの、私、そろそろ戻りますね」
 遠慮がちに声をかけると、カナタさんはにこりと微笑した。
 「そうですね、もう夜も遅いですから」
 「カナタさんたちも、あまり遅くならないうちに、気をつけて帰ってくださいね」
 私がそう言うと、彼は少しだけ目を見開いてから、ゆっくりと満面の笑みをつくった。薄茶色の瞳が、月光を反射して金色に光る。

 「ありがとう」

 その笑顔があまりにも素敵だったので、私は体中の血が顔に上ってきたような錯覚に陥った。
 真っ赤に染まった頬を両手で押さえながら、
 「さよなら」
 やっとそれだけ言って、私は、逃げるように早足で家へと戻って行った。
 そんな私の背後で、カナタさんがくすりと笑ったような気がしたが、私にはそれを確かめるために振り向く勇気はなかった。

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