猫目堂
B
カランカラーン……
扉を開けた途端、ドアベルの澄んだ音がして、少女は驚いて足を止めた。
同時に、清潔な空気とコーヒーの良い香りが漂ってくる。
入り口に突っ立っている少女に向かって、
「いらっしゃいませ」
綺麗な顔をした若い男が二人、カウンターの中から笑顔で声をかけてくる。一人は金髪、一人は黒髪。二人とも背が高く、年齢は二十代半ばくらいだろうか。
(うわ!二人ともめちゃくちゃカッコいい!!)
年頃の女の子らしいときめきを覚えながら、少女は思い切ってカウンターへと近寄って行った。
「あの……」
少女がおそるおそる声をかけると、
「はい。ご注文ですか?」
黒髪のほうが、愛想よくにこりと笑う。
またしても胸が高鳴るのを感じながら、少女はつとめて冷静な口調でその店員に尋ねた。
「すみません。ここ、どこですか?」
黒髪の店員も、金髪の店員も、少しだけ驚いたように少女を見つめた。
美形二人にまじまじと見つめられて、少女は恥ずかしさのあまり、みるみる頬を赤く染めていく。
(そうだよね。こんな馬鹿な質問したら、呆れられるに決まってるじゃない)
(やだ。絶対「こいつ馬鹿だ」って思われてる)
少女はますます顔を赤らめながら俯いた。
しかし、そんな少女に、店員は優しく声をかけた。
「どうやら、道に迷われたみたいですね」
「え?」
少女がはじかれたように顔を上げると、二人の店員は相変わらずにこにことほほ笑んでいる。
二人は、ためらっている少女を、カウンター席に座るよう促した。
それから、
「良かったらどうぞ」
そう言って、あたたかいミルクティーの入ったカップを差し出した。
少女はぼんやりとそれを受け取ると、全身から力が抜けたように大きく息を吐き出した。それを見て、二人の店員はますます優しげな微笑を浮かべる。
「さあ、疲れたでしょう」
「どうぞごゆっくり休んで行ってください」
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