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猫目堂
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 とある山奥の小さなバス停の近くに、小さなお店があります。
 その扉には、こんな看板が・・・


《喫茶・雑貨 猫目堂》

『あなたの探しているものがきっと見つかります。
どうぞお気軽にお入りください』



 さあ、扉を開けて。
 あなたも何か探しものはありませんか?




【猫 目 堂 7th】
― 翼あるもの ―





 今日もまた、彼は重い足取りで『猫目堂』のドアを開けた。

 カランカラン……

 軽やかで澄んだドアベルの音は、彼の沈んだ気持ちをなおさらに空しくさせる。
 「いらっしゃいませ」
 カウンターの向こうから笑顔でそう言いかけた二人の店員は、そのお客を見て言葉を飲み込んだ。そして、お客の浮かない顔色がうつったようにさっと表情を曇らせた。

 「今日も駄目だったよ」
 お客はカウンター席に腰かけて、重苦しいため息とともにそう言う。そのまま視線を伏せて、眺めるともなく、すっかり荒れた自分の両手を見つめている。
 小さな背中には、片方だけの翼と無残にもぎ取られたもう片方の翼の残骸。
 何度見ても痛々しいその様子に、二人の店員はますます顔色を暗くする。
 「僕の翼は、いったいどこへ行ってしまったんだろう?」
 誰に問うともなく呟かれる言葉に、
 「アラエル、あのさ……」
 黒髪の店員――カイトが心配そうに声をかけようとするのを、金髪のラエルがそっと押しとどめる。
 問いかけるような眼差しを向けるカイトに、ラエルはただ静かに首を振る。
 そんな二人の様子にもまったく気がつかず、お客はがっくりと頭を垂れたまま動かない。小さな唇からは、飽くことなく何度も何度も大きなため息が吐き出される。
 もうすっかり見慣れてしまった光景。
 こんな状態がひと月近く続いていた。




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