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リクエスト小説
リクエスト4
公爵視姦でのヴァンガイ。公爵の言葉責め。最後は三人で。(おーとり様)

公爵がガイにHな勉強を強要から続いています



湯浴みの後、備え付けの寝衣に袖を通している最中に、扉を叩く音が耳に入る。
このような夜更けに、とヴァンは訝しげに眉を顰めるが、素早く着衣をして入室を促す声を掛ける。
扉を開けて入ってきたのは、この屋敷の執事であった。
先ずは深夜の来訪の非礼を侘び、次に申し訳なさそうに、この屋敷の主がヴァンを私室に呼んでいる旨を告げる。
否と言えるはずも無いヴァンは、着替えるので少しばかり時間をいただこう、と執事に答える。
ならば扉の外でお待ちしております、と頭を下げてそのまま退室する。
扉が閉まると同時に溜息を小さくつく。
深夜という事もあり、軽装でかまわぬだろう、とヴァンは袖を通したばかりの寝衣を手早く脱ぐ。


「謡将、例えば己の手に宝玉の原石があったとしよう。貴公はそれをどう扱うかね」
人を深夜に呼びつけておいて何を言い出すのだ、という思いは微塵にも表情に出すことなく胸の奥に仕舞い込む。
屋敷の主はナイトガウンを羽織り、ワイングラスを指で摘み軽く回している。
口をつける気配もなく、その名と同じ真紅が揺れるのを子供のように楽しんでいるかのようだ。
滞在している内に、夜中に酒の相手として呼ばれる事はこれが初めてというわけではない。
他愛も無い会話をかわしながらも、互いに抜け目なく腹を探り合うだけなのだが、今日は何か様子が違うのをヴァンは感じとり警戒を深める。
公爵は何かの比喩として宝玉の事を持ち出しているのだろう。
貴族独特の、言葉を必要以上に美辞麗句に飾り立て上滑りさせながら、ドロドロとした真意をぶつけ合う会話は武人気質のヴァンには
殊更骨の折れる行為であり、迎え入れる客人にあわせて会話を選ぶ公爵にしては珍しいといえる。
少しばかり逡巡するが、ヴァンは宝石などに価値を全く見いだせぬ人物であったので、素直に公爵の問に応える事にする。
「無骨な軍人ゆえ、扱う術を何一つ存じません。そのような事態に陥ってはいささか対処に困りますな」
「謡将はいささか己を過小評価しておられるようだ。お若いのに、その手練手管に長けておると聞き及んでおるが」
言葉の真意を計りかねて、ヴァンは無言で公爵を見詰める。
その沈黙に公爵はふっと表情を緩めて立ち上がる。手には変わらずグラスを持ったままだ。
「まあ良い。このような夜更けにお呼びだてしたのは、手にした原石が私の磨き方が拙かったようで、なかなか私の手に馴染もうとしないのだ。
少しばかり謡将の手をお借りしたい」
そう公爵は告げると踵を返して、続き部屋への扉を開ける。
初めて足を踏み入れる続き部屋は寝室になっており、ヴァンは眉を微かに顰める。
警戒心を強めていたヴァンの耳には、微かな水音が入り、鼻は独自の匂いを嗅ぎとる。乱れた寝台をみれば少し前に何が行われていたのかは明確だ。
面倒な夜になりそうだ、とヴァンは勧められるままに椅子に腰をおろし、諦観しながら小さく息をついた。


公爵の意図は把握した。要は公爵の愛人を彼の目の前で抱け、という事だ。
そのような趣向を好む輩は上層階級に少なくないのは判ってはいたが、その一端をまさか担わされる事になるとは。
ヴァンは頭が痛むのを感じながら、勧められるままに、真紅の液体を口に運ぶ。
公爵は頬杖をつきながら、先程と同じようにくるくるとグラスを回し、揺れる液体をみて楽しんでいる。
いや、正確にはこの先に起こる出来事に思いを馳せて、幼子のように気持ちを高揚させているのだろう。
止んだ水音に続いて、衣服の擦れる微かな音がヴァンの鼓膜を震わせ、気を重くさせる。
静かに、寝室奥の扉が開かれる。
そこから現れた人物にヴァンは驚きに目を見張る。
それは彼も同じであった。
扉に手をかけたまま、その場に立ち竦む。
ヴァンと、ガイの驚愕の表情に公爵は可笑しそうにくっくと喉の奥で笑う。
瞬時に沸き起こった強烈な殺意を必死に押し止める。テーブルの下で拳が色をなくすほどに硬く握り締める。
激しい怒りに燃えながらも、ヴァンは冷静さを失う事はない。思考を素早く張り巡らせる。
ガイラルディア様や自分の素性が明らかになったわけではないだろう。
対峙した瞬間に兵がこの部屋に乗り込んで私たちを捕らえるはずだが、屋敷は変わらずに静かなままで、待機している様子もない。
単純に顔見知りに抱かれる事でガイラルディア様の矜持を踏みにじろうとしているだけなのだろう。
私は客人で常に顔を合わせる関係でも無く、貴族のように口も軽くはない。誰よりも都合がよいのだろう。
なんとも悪趣味な事だ。
視線をガイに向けたまま、ヴァンは内心を悟られぬように、平素と変わらぬ口調で公爵に話しかける。
「何かと誤解を招きやすいのですが、私はそちらの趣味は持ち合わせておりません」
驚愕に青い双眸を開き、顔は血の気を失いながらも、それ以上の動揺を必死で隠そうとするガイに気持ちを視線にのせる。
だが、ガイは顔を背け、ヴァンの方を決して見るまいとするように、床に視線を落とす。
「謡将、これでも私は色々考えたのだよ。
この者は抗命なところが見受けられてな。そういう手合いは些細な矜持を踏みにじると、あっけなく柔順になるものだ。
だが、宝玉を手に触れるにはそれ相応の者ではなくてはいけない。石ころのように粗雑に扱われても困るのでな」
「先程も申し上げましたが、私は武骨者ゆえ公爵のお眼鏡に適っているとは到底思えません」
「謡将」
今までと変わらぬ口調であるが、ヒヤリとした刃の冷たさを滲ませている。
「私が決めたのだよ」
それは拒否を絶対許さない、常に人の上に君臨してきた男の命令だった。


何故己の主であるガイがこのような屈辱に耐えているのか、と考える暇もなく明確に答えは出てくる。
いつの日にか、この男の喉笛に牙を立てるその時まで何があろうとも柔順な素振りで隙を伺っているのだ。
私の浅慮で彼が今まで必死に耐え、築いてきたものを壊すわけにはいかない。
覚悟を決めてヴァンは椅子から立ち上がる。
いまだ扉の傍で床に目線を落としたまま、立ち竦むガイに向かって手をさしのべる。
「来なさい」
口からでた言葉は命令の形を取るが、ガイに向ける視線は限りない慈愛の念を含んでいる。
天に向かって開かれた掌には赤い血が滲んでいる。
強く握りすぎたか、とヴァンは他人事のように思いながら、気づかれぬように掌に第七音素を集中させる。



ヴァンの顔を直視出来ずに床に視線を落としていたガイが、その言葉でようやく顔をあげる。
視線は真っ直ぐに公爵に向けられる。
縋るように、助けを求めるように、必死さを滲ませた視線に公爵は深く満足する。
何があろうとも、あの青は私に頭を垂れる事なかった。強い眼差しで私には屈指ようとはしなかった。
薬物を使用してみたが、それはあくまでも薬の力であり、彼の本意ではなかった。
懇願してくる様子は楽しかったが、それをさせたのが己の力ではない事が趣に欠け、あまり愉快ではなかった。
だが今はどうだ。
澄み渡った空のような青は、今は弱々しく縋るように私に救いを求めてくるその様子に、心が愉悦に震える。
目論見は成功したといっていいだろう。
では、次は。
その瞳が絶望の染まるのを楽しませてもらおう。
「ガイ、謡将に可愛がっていただきなさい」


浴室の扉を開けて、立っていた人物がどのような種類の男であっても、ガイはすぐに腹を括ってその男に抱かれたであろう。
公爵が望んだ姿を晒すことはなかったはずだ。少しでも怯んだ表情を見せれば公爵を喜ばすだけだと分かっていたからだ。
ただ、唯一の例外が存在した。ヴァンデスデルカという別名を持つ幼馴染であった。
彼だけはガイの特別だった。
奪われた春の陽だまりのように暖かく優しい過去を共有し、永久氷壁の如く何事にも揺るがない復讐の念を共有しあう仲間。
身を汚し、屈辱に身を震わせることがあろうとも、それが支えだった。過去の残像で、血で穢して手にする未来図で、傷ついた心と身体を癒して耐えてきたのだ。
一点の穢れもない過去と未来に存在するのがヴァンデスデルカだったのだ。
そしてその男が驚愕の表情を浮かべて瞠目している。
グラリと足元が崩れていくようで、扉に凭れるようにして必死で踏みとどまる。
向けられる視線に僅かでも侮蔑が含まれていれば、息をする事さえも辛くなる。その思いで床に視線を落としたまま顔を上げられないでいる。
しかられるのが怖い子供のようだ、とガイはどこかぼんやり考えていた。
そうしているうちに、引くも逃げるも出来ぬところまで追いつめられてしまったのだ。ガイも、ヴァンも。
ヴァンの低い声がガイの鼓膜を震わせた時、ようやく顔をあげて懇願をする。この部屋で唯一この愚かな行為をやめさせることのできる男に。未来、刃をその心臓に突き立てる男に。
だが、その願いはあっさりと打ち捨てられる。
絶望に染まったガイに再度ヴァンが声を掛ける。ゆっくりとヴァンをみれば、どこまでも優しい瞳で、自分を見つめている。
そこでようやくガイは息を吐くことができた。
差し出されたヴァンの掌が赤く染まっているのがガイの目に止まる。
その意味を把握し、自責の念に苛まれながらも、震える手でヴァンの手を取る。
ふわりと温かな「気」のようなものがヴァンの掌から溢れ、彼の掌から忌まわしい赤を消し去っていた。


後編へ続きます
ごめんなさい


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