鮫にはセンスの欠片もない
私が走る先には、銀髪でよく目立つ鮫が注目を浴びて立っていた。
「…………ちょっとスクアーロ」
「!ゔおおい、てめえ遅すぎだぁ!」
「すいませんでした。…………それでこの状況は何!?」
「あ゙あ?何って…………別に何も…………」
「無いとか言ってんじゃないわよ、鮫!」
「?」
何がなんだか分からない、という風に首をかしげるスクアーロ。私はそんなスクアーロの腕を取って、急いで壁際まで寄った。
ああ、いっそこの壁と同化したい…………。
「?何だぁ、どうした?」
「どうした?じゃねえよ、何で殺気バラ撒いてんのよ!」
「虫除けだぁ」
「!?」
そう…………私が遅れてスクアーロとの待ち合わせ場所を目指しているとき。
私は見てしまったのだ。
………………いや、そりゃあ私も、囲まれるな、とは言った。言ったわ。
でも誰も殺気をバラ撒けとか、注目を集めろとか、子供を泣かせとか、一言も言ってはいない!!断じて!
さっきは色んな意味で色々と凄かった。
まず、遠くからでも分かる殺気。目安25mは離れているであろう場所からでも、ひしひしと伝わってきた殺気は聞く話によると、うじゃうじゃと寄ってくる女どもを遠ざけるつもりでやったらしい。流石ヴァリアークオリティと言いたいところだが、それをすることでの周りへの被害をよく考えて頂きたい。
私、これなら囲まれていた方がマシって思ったわよ。
次に、殺気効果で子供が泣き出してしまう。大方子供の本能というものに当てられたに違いない。親は落ち着かせるのに大変苦労していたようだ。
そして…………前者の二つによって嫌ってほど集まる視線。勿論原因はこいつなので集まっても文句など言えないが…………。
よく、警備員が駆け付けなかったものだ。
さっき晴らしたはずのストレスがこんな短時間で溜まってゆく…………。
私は頭を押さえた。
「…………それで?服はどうなったの?」
「お゙う、これだぁ」
ずいっと差し出してくる紙袋。流石にこれから生活する分が入っているだけあって、結構な重さだ。私はチラリと覗き込む。
…………なんか蛍光色が見えたんだけど。
「………スクアーロ。これどこで買った?」
「?あそこだぁ」
「今すぐ返品してこい」
スクアーロの目の前に紙袋を差し出す。
「は?なぜだぁ?」
「何・故・だ、じゃない!」
嘘でしょ。
私は片っ端から袋の中の服を取り出す。
「何これ!」
「服だぁ」
「分かってるわ、んなこと。そうじゃなくてそれとこれ、セットで着る気!?」
「駄目かぁ?」
最初に取り出したスクアーロが選んだ服。それは、柄物のTシャツにチェックシャツ。…………色が物凄くチカチカする。
「あんたこれ来て出掛ける気?ふざけんな」
「?別に良いじゃねぇか」
「有彩色が三色以上の組み合わせは大体キモいって決まってんの。ボツ」
そう言って私は横に避ける。
次に取り出したのはボーダーのシャツ。
「それはさっきの…………」
「ざけんな。柄物は合わせんな」
これもボツ。
「何これ…………」
「それもダメかぁ?」
私が取り出したのはダッボダボのパンツ(ズボン)。
これはなくもないこともないけど…………。
「さっきの組み合わせからしてボツ」
「…………ってそれじゃほとんど残ってねえじゃねえかぁ!」
「うん。だから全部返品してこい」
さもなくば裸で生活しろ。
私は笑顔でスクアーロに紙袋を突き出した。
鮫にはセンスの欠片もない
(…………今までどうしてたの)
(あ゙あ?ルッスが上から下まで合わせて直してたからそれを着てたぞぉ)
(…………流石お母さん)
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