白銀の天女(高銀♀)
白夜叉。
血に濡れたその姿は正しく夜叉。
そう言われ、恐れられた伝説の英雄。
その名を聞くだけで大体の天人は身を震わせた。
だが、そんな夜叉にはもう一つの二つ名が陰で存在した。
「白銀の天女」
そいつは、いつも依頼と言って電話をかけてくる。
「はいはーい、万事屋銀ちゃんでーす。」
そう明るく答えた銀時は電話から聞こえてきた声に顔を顰めた。
しばらく受話器に耳を当て、最後に分かったよ。と哀しそうに顔を歪め電話を乱暴に切った。
そして、すぐ玄関に行きブーツを履き始めた。
その様子を見た新八は、掃き掃除を止めて銀時に声をかける。
「あ、また、銀さん飲みに行くんですか?」
「ん?あぁ、そんな感じ?んー、でも依頼だからなぁ。」
「え?依頼ですか?なら、僕達も行きますよ?」
「ん、いいよ。大丈夫。俺一人だけでへーき!」
そうですか?と心配そうに言う新八にだいじょーぶ!と言う。
ブーツのつま先をトントン叩き、玄関の戸に手をかけた。
そこで、あ、となにか思い付いたように振り返る。
「今日、俺帰らないとおもうから神楽を新八の家につれていってくんない?」
「あ、はい。」
と新八が答えれば、ん、あんがと。
と言って外へと出て行った。
「銀ちゃん、またアルか?」
そう言って顔を出したのは神楽。
いつものハツラツとした様子はなく
何処か不安そうだった。
そうだよ。と新八がこたえれば、より一層不安が濃くなったのだった。
銀時は、夜の歌舞伎町を歩く。
光輝くネオン。そんな中鈍い銀色の光を宿しながら銀時はある男の事で思いふけっていた。
旧友だった男。昔からクールを気取ってて中二で意味わかんなくて。
でも、銀時が血塗れで帰ってきた時は黙って抱き締めてくれた。
耳元で名前を呼ばれれば、凄い身体中が熱くなって、そんな小さな事のようだったけど、その時の夜叉にとってはとても大切な支えだった。
そう支えだった。なのに……
銀時はため息を吐くと、目の前の遊廓に目を向けた。
豪華な建物。中からは三味線の音や笑い声が聞こえる。だが、そのおとに混じる微かな喘ぎ声。
おいおいしっかり防音しとけよ。と眉を潜めながら銀時は遊廓へと足を進めた。
中へ、入れば
「まってましたよ。」
と男が出てくる。
「彼奴いる?」
と聞けば、ええ。と笑顔で返された。
銀時は、ありがと。と言うと遊郭の奥へと進んで行った。
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