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小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結

〈そういえば、この二人も幼稚舎の頃からだから、かれこれ400年以上の関係になるのだな〉

弟のようにかわいがっていた星が、よりにもよって男の黎と恋愛関係になるなど、夢にも思わなかった。

主夜とて、他者の恋愛をどうこう言うような野暮ではない。

星が黎のそばで幸せになれるのなら、何も言うつもりはなかった。

ただ、目の前で星が黎に抱きしめられたりしていると、大事なものを取られたような、祝福したいような、反対したいような、何とも複雑な気持ちになるのである。

〈400年も続いているのだから、この二人なりに真剣なのだろうな〉

そう考えて、星と黎から目を逸らしたとき、
「いらっしゃい、主夜。これで皆さまお揃いね」

少し高めの柔らかい声がして、桃子が姿を現した。

「葵と蘭は呼んでいないのか?」

葵と蘭は神界の貴族で、やはり幼稚舎の仲間である。

「ええ。今、わたくしは封じの罰を受けている最中で、表立っては神界の助けを得られないのです。それでもあの二人は、折に触れわたくしを助けてくれていますわ」

「まったくもう…。どうしてこんな事になっちゃったのかしらね」

絨毯の上に直接あぐらをかいている月の膝の中に、さも当然のようにすっぽりと収まりながら、桜子がぼやく。

「仕方ありませんわ。恋愛など、自分の都合のいいようには始められませんもの。それは、黎も桜子も、星も月もご存じでしょう?」

「そりゃそうだ。…ほら、星。あーんして」
黎が星の口の中にケーキを入れながら、相槌をうつ。

「ちょっと待て。俺にはさっぱり話が解らない」

なるべく黎と星を見ないようにしながら、
「しばらく会わない間に、何があった?」

「桃子ったら、こともあろうに人間に恋しちゃったのよ。それで、人間との間に子供を作っちゃったわけ。鬼界じゃ珍しくないことだけど、神界の掟では人間と契ることは禁じられているもの。いくら神王の娘だって罰を受けるわ。それでここに封じられちゃったのよ」

「神界の模範とならなければいけないわたくしが、掟をやぶったのですもの。封じは掟で定められている期間の倍になってしまいました。でも、後悔はしていません。わたくしはあの方に会って、幸せでしたし、子どもを授かったことは喜びですわ」

「…わからん」
主夜には理解できない。

神が人と契ることは、重罪だ。
神界の掟で定められている封じの期間は、最も長い100年間である。

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