小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結 38 紫陽を手に入れるためなら、どんな手段でも使う。 紫陽の瞳がびっくりしたように見開かれ、やがて寂しそうな笑顔になる。 かわいい顔が、はっきりと横に振られた。 「俺と一緒にいるのは嫌か?」 紫陽の首が再び横に振られて、 「主夜さまと一緒にいるのは、大好きです」 「ではなぜ一緒に暮らすのが嫌なんだ」 いけないと思いながら、責めるように聞いたとき、 「紫陽坊ちゃま、陰陽寮からお迎えが来ていますよ。怪我人が出たそうです」 ノックとともに麻の声がした。 寮、という言葉を聞いて、紫陽の体がびくっとふるえた。 無意識にだろうが、主夜の腕をぎゅっとつかむ。 全身で行きたくないと訴えているようだ。 「行きたくないのなら、行かなくていい」 主夜がそう言うと、紫陽はまた寂しそうにほほ笑んだ。 「大丈夫です。今、行きます」 紫陽はドアの外の麻にそう言って、主夜の腕を離しゆっくりと起き上がる。 「紫陽、用が済んだら、またここに戻ってくるだろう?」 どんな口実を使っても、今日中に紫陽がこの家に住むという約束を取りつけたい。 「はい」 思いのほか嬉しそうな声で返事がくる。 「1〜2時間で戻ります」 〈−遅いー〉 11時頃ここを出た紫陽は、1〜2時間で帰ると言っていたが、もう3時を過ぎようとしている。 麻が用意してくれた昼食は、そのままテーブルの上で冷めてしまった。 「遅うございますね、紫陽坊ちゃまは…」 「ああ」 用事が長引いているのか。 突発的な何かが起きて、ここに戻れずにいるのか。 〈くそ!イライラする〉 先ほどまで、どうしても紫陽を手に入れたいと思っていた自分とは、まるで別人のように自身が無い。 「主夜さま」 麻が食堂で熊のようにウロウロしている主夜に声をかけた。 「なんだ」 [*前へ][次へ#] [戻る] |