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小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結
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「ぼっ、ぼく、なにもっ…できなくて…ただ見てるだけでっ…」

しゃくりあげている紫陽を見下ろして、どうやら嫌われたわけではないと、ほっとする。

「紫陽にはまだ術を教えていない。何もできなくて当たり前だろう」

「だってっ…主夜さま一人、危険な目にあわせてっ…」

「なんだ、心配してくれたのか?」

しゃくりあげながら、紫陽が何度も頷く。
紫陽を落ち着かせようと、華奢な背中を軽くたたきながら、主夜はたとえようもない満足感を覚える。

紫陽にはかわいそうだが、自分の事で紫陽が泣いているのは、とても心地がいい。

〈泣き顔もかわいいな〉
と、そっと抱きしめて柔らかな髪を撫でる。

「俺はあれくらいの事で怪我などしない。泣かなくても大丈夫だ」
「だ、だって…」

「お前がいずれ術を覚えて強くなったら、助けてもらうこともあるだろう。だから、今は泣く必要はない」

慰めるためだけに口にした言葉に、紫陽は敏感に反応してぱっと顔を上げた。

「主夜さまみたいに、剣を出すことができるようになりますか?」

「ああ、そうだな」
そう答えながら、主夜は少々困ってしまった。

術は気を一点に集めて作り出すものだ。
気には個々の違いがある。
だから、現れる武器も戦う方法も皆違う。

印を結び呪を唱え、気そのものを武器として飛ばすものもいれば、主夜のように気を固体化し、剣を形作って戦うものもいる。

紫陽の手から出る気は、小さくて優しいもの、例えば仔リスや仔ウサギのようなものになってしまうように感じるのだ。

〈まあ、出てくるものが仔リスだったとしても、それで戦えれば問題はないからな〉

小さくてふわふわの仔リスをたくさん従えて戦う紫陽の姿を想像して笑いそうになったとき、こちらを見上げている紫陽と目が合った。

泣き止んでいるが、鼻の頭が赤い。
額に竜胆(りんどう)の印が残ったままだ。

消してやらねばならないかと思ったが、紫陽の額に自分の印がついているのは、なんとなくいい気分だ。

そのままにしておくことにした。
放っておいても、明日の朝には消えてしまうのだ。

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