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火炎龍と狼(仮) (煌鷹)
第三章:ファイヤードレイク
 〈ファイヤードレイク一派〉の指導者である彼は、数週間振りに砦に帰って来た。妙に冷えた空気に身震いする。
 (俺の知る限り、この辺りがこんなに寒いことは今まで無かった。これは〔革新の時〕の前兆と見るべきか?未だ現れない〔運命の子〕が密かに活動を始めている証拠だと考えたいものだが)
 雲が低く垂れ込めている。
 ファイヤードレイクが砦の門を通り抜けたとき、奥から子供のような明るい声と共に一人の青年が駆け寄ってきた。
 「ファイヤードレイク様、お帰りなさいませっ!」
 「シヴァラか。心配をかけてしまったようだな……」
 シヴァラは首を横に振ると嬉しそうな目で主を見つめた。彼は今の主に出会って以来、ただ只管にファイヤードレイクに憧れ、主を慕い続けている。素直と言えば素直なのだが、年齢の割に幼い性格なのがファイヤードレイクの心配の種ともなっている。しかしシヴァラの持っている技術は相当なものだ。
 「あ、そうだ!この前兄貴に頼まれたやつ、作っておきました!いつでも使えるようにしておきますので、必要な時は言って下さい!」
 「俺が頼んだ…?ああ、そうだったな。思っていたより早いな、助かるよ」
 ファイヤードレイクは今までも色々な武器や道具などの製造を彼に任せてきた。以前には敵の拠点に侵入するために、睡眠薬を作らせたこともある。これは非常に効き目が強く重宝した。
 先述の通り口調と年齢が合致しないことに目を瞑れば、シヴァラは素晴らしい人材である……が、これでも彼は十九歳だ。
 「何を騒いでいる?…おや、兄貴が」
 シヴァラの大声を耳にしたスレイプニルが外に出て来た。いつも冷静に振る舞ってはいるが、彼もまたファイヤードレイクを実兄のように慕う者の一人で、内心では主が帰ってきたことが嬉しくて仕方がない。
 「お久し振りの帰還ですね、兄貴」
 「すまなかったな。用を済ますのに少々手間取ってしまった…それにまた、できるだけ早く出かけなければならない」
 シヴァラが「ええっ」と叫ぶ。
 「そうですか。なにか我々にお役に立てることは?」
 「スレイプ兄貴っ」
 黙っていろ、とばかりにスレイプニルはシヴァラを睨みつける。
 「いや、特には思いつかないが」
 「分かりました。……そういえば、兄貴に伝えておかねばならない事が一つ」
 スレイプニルはファイヤードレイクの耳に口を近づけ、囁くように言った。
 「ファーブニルが…兄貴のことを探っています」
 ファイヤードレイクは不吉な何かを感じた。


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あきゅろす。
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