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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 和倉温泉で聞き込みを続けている、吉岡と岡部の方にも進展があった。ようやく、目撃者を発見したのだった。
「確か、13日の真夜中だったかしら。既に14日になっていたかも知れないわね。」
 その人は、和倉温泉の向かいにある、能登島に住んでいる方だった。
「夜中の12時前後に、なんか音がしたから、窓から覗いてみたんだけど、2台の全く同じ車が止まっていたのよ。ライトバンだったかしら。うちの亭主がそう言っていたわ。」
「その車はずっと止まっていたんですか。」
 と、吉岡が聞いた。
「そうね、しばらく車の中で、電話で話をしていたみたいでしたわ。それから1時間ぐらいして、屏風崎方面に向かって行きましたよ。多分あなた方の話だと、和倉温泉に向かったんでしょうけど。」
「ということは、車はおそらく逆方面から来たということでしょうか。」
「そこまでは流石に分からないわねえ。」
「そうですか。どうもご協力ありがとうございました。」
 吉岡たちは、この情報を元に、能登島の中で捜索に入った。もしこの話が本当ならば、近藤夫妻も能登島の中で監禁されている可能性もあるのである。
 しかし、彼らの捜索はかなり大変だった。いくら能登島がそれほど大きくないとしても、沿岸はまだ良いが、島の中央は何がなんだかよく分からない。要するに、開発はされていないということである。だから、中央に家が一軒建っていたとしても、どうやって行けば良いかが問題なのである。
 しばらくして、またしても良い情報が吉岡らのもとに届いた。能登島の住民によると、島の内部に既に廃校になった私立小学校があるという。地図を見た限りではそんなものは無かった筈だが、と二人は思ったが、一応行き方を教えてもらい、そこへと向かった。
 島の中央へと向かうと、確かにぼろぼろになった校舎があった。しかし実際には、校舎という表現はあまり正しくない。木造である上、だいぶ前に廃校になり、雨ざらしになっていたのだろう。廃屋といった方が正しかったか。
 いずれにせよ、吉岡と岡部は、用心してこの校舎の中へ入って行った。
 校舎へと一歩入った瞬間、二人の鼻を悪臭が襲った。外からは分からなかったが、校舎の内側が焼けているのである。明らかに放火の跡が見て取れた。なぜなら、外壁には耐火クリームが一面に塗られていたのだ。
「一度、大倉警部補に伝えたほうが良いんじゃありませんか。」
 と、岡部が聞いた。
「別に構わないわ。私たちだけで問題ない筈よ。」
「それにしても一体何があったんでしょうかね。」
「何かの証拠を消そうとしたとしか考えられないわね。」
「ということは、やはり近藤夫妻をここに監禁していたのですかね。」
 岡部が目を輝かして言った。
「場所を移す際に燃やしたのなら良いけど……。」
 吉岡はそう言って、奥へと入って行った。
 校舎の一番奥にあった、今にも崩れそうな扉をこじ開けたとき、二人は目と鼻を覆った。あまりの恐怖に、どちらも声が出なかった。

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あきゅろす。
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