十五年越しの殺意(外村駒也)完 ページ:9 元西は、新横浜にある自宅へと戻ると、早速コピーをとった戸籍謄本を見てみた。やはり自分の見間違いではなかったと、元西は改めて思った。 元西が注目したのは次の点だった。注目したというよりは、そこに目が行って当然の点であった。 戸籍上には、今川愛奈の両親が、丁度15年前の6月に自殺して亡くなっていることが克明に記されていた。しかし、それだけではなかった。彼女の一つ年上の兄に当たる、今川周平が、同じく同年の6月から、行方不明になっているのである。どちらかといえばこちらのほうが重要である。なぜなら、もし彼、今川周平が、今も生きているとしたら、現時点で最も犯行の可能性が高くなるのである。 元西は早速、武井警部に連絡を取った。 「もしもし、武井警部ですか。」 「元西君か。何か新たに分かったかい。」 「はい、かなりの重大事項だと思います。実は、亡くなった今川愛奈の家族ですが、15年前の6月に、両氏は自殺して、彼女の兄である今川周平は行方を眩ましています。もし、今川周平が失踪した理由が、妹と両親の死にあったとしますと、彼が今回の事件の犯人である可能性が、非常に高くなります。」 と、元西は説明した。 「なるほど、家族を一度に三人も失ったことに対する復讐か。有り得るな。しかし、肝心の今川周平の行方は掴めないんだろう。」 「残念ながら、今の所はそういうことになります。流石に15年前に失踪した人を見つけるのは困難でしょう。国内にいるとも限りませんから。」 「確かにそうだな。……いや、違うぞ。もし彼が犯人なら、間違いなく今は国内にいる。」 武井はいきなり、思い出したように言った。 「え。一体なぜですか。」 元西は解せないといったような感じで聞いた。 「考えてみれば単純なことだよ。今、近藤夫妻が人質に取られているじゃないか。彼らが国外に出ることはあり得ないから、その犯人とやらも国内だろう。」 「しかし、もしも近藤夫妻が既に殺害されているとしたら、一概にそうとは言い切れませんよ。」 「もし、そうだとしても、身代金の受け渡しの時に、車を2台使ったから、今川周平が主導犯だとしても、複数人の犯人グループになる。単独では不可能だ。すると、人数が多くなるから、あまり大胆には動けなくなるはずだ。だから、国外にはなかなか行けない筈だよ。」 と、武井は説明した。 「すると、犯人たちはまだ国内で身を潜めているということですね。」 「ああ、そうなるな。しかし、本当にすごい情報を持ってきたな。感謝するよ。これからもよろしく頼む。」 そう言って、武井は電話を切った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |