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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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「昨日、青木と遭遇したんですか。」
 翌朝、小川と会った武井は、前の晩に起こった出来事をありのままに小川に話していた。
 小川は顔を真っ青にしている。
「ああ、下手をしたら撃ち殺される所だったよ。背中に銃を突きつけられていたからね。当の私は丸腰だったから、正直、全身冷や汗でいっぱいだったね。」
「私に言ってくれれば、側に張り付いていられましたよ。」
「そんなことをすれば、かえって青木を挑発することになる。」
 と、武井は言った。
「十分挑発になっていましたよ。週刊誌の件でね。だって、激昂していた訳でしょう。」
「いや、意外と初めは落ち着いていたよ。渡嘉敷の件に話が移ったときに、かなり感情が高ぶっていたみたいだ。」
「すると、警部の予想通り、青木は渡嘉敷に対して、恩のようなものを感じていそうですね。」
 と、小川が言った。
「ああ。だが、これで青木が渡嘉敷に疑念を抱けば成功だ。あとは、二人の監視を強めて、接触する現場に、必ず我々が張っていられるようにすればいい。」
「武井君はいるかい。」
 二人の会話の最中に、福田捜査一課長が武井のもとに来た。
「少し話があるのだが……」
「ええ、構いませんよ。ガワさん、ちょっと待っててくれ。」
 武井はそう言って、部屋を出た。
「実は、神田部長が君を呼んでいたんだが、今回に関しては私から話をしようと思ってね。」
「今回というのはどういうことですか。」
「君は昨日、青木修平と接触したんじゃないのかね。」
「いえ。相手は今川周平と名乗っていました。」
 と、武井は言って、笑った。
「どちらでも同じことだと言ったのは、君の筈だが。」
 福田も武井につられて苦笑している。
「ええ。そうでしたね。」
「それで、やはり会ったんだな。」
「何か問題でも……」
「それがどこからか知らないが、神田部長の耳に入ってね。恐らく目撃者でもいたんだろう。」
「しかし、あの暗さではどうやっても見えないと思いましたが。」
「だとしたら、会話が聞こえたんだろうな。君は青木を挑発する目的で行ったのだから、かなり会話が激しくなるのは仕方なかっただろう。」
「なるほど。それなら多分可能性があります。」
「しかし、それならなぜ君は青木を捕まえなかったんだね。部長はそのことを問題視しているみたいだ。」
「捕まえるのが目的ではありません。前にも言った通り、仲間割れを狙うのが……」
「青木が実行犯なら、彼を捕まえれば事件は終結するじゃないか。」
「しかし、渡嘉敷は青木を殺すことも目論んでいる筈です。つまり、栗原は渡嘉敷自身の手で殺す心算でしょう。それならば、彼らをまとめて捕まえるしかないです。任せて下さい。必ず解決してみせますから。」
「分かった。部長には私からうまく言っておこう。」

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あきゅろす。
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