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War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完
:交渉
「お入りください、トスキール公国宰相殿」
ボレイゲン特設外部対応庁の応接室の中へアルバート・ナイファーは一人で入って行った。
「失礼致します、ズヘニグ殿。ではまず、なぜ私がここへ来たのかはお分かりでしょうが、確認します」
「はい」
「現在、トスキール公国はローゲン帝国と交戦状態にあります。今の所大きな被害はありませんが、この状況がいつまでも続くとは考えられません」
「ほう」
「そこで、我々は貴国と軍事同盟を結び、戦力を糾合して帝国軍に立ち向かい、また我が国の避難民の受け入れをお願いしたい。これが我々の要求です」
「……無理がありますな」
「なぜ?」
「まず、我々には帝国と戦う理由がない。しかも、この戦争は貴国から始められたとも聞き及んでおりますが」
「それは……」
「それに、我が国には貴国の国民を全て生活させるだけの土地がありません。一時的に収容できたとしても、それはいずれ混乱を招きます」
「そう言うだろうと思いました。しかし、これを見てはどうでしょう」
ナイファーは持参した細長い箱から、重々しく一本の黒い槍を取り出した。
「こ……これは!」
「七種の神器の内の一つ、シクザールの槍です……いかなる的をも外さぬ槍です。我々が永遠に古き盟約で結ばれている事を体現した物です」
「それを、どうしようと言うのかね」
「差し上げます」
一瞬の沈黙。
「フン!ただの神話にすぎませんな。実際、そのような事があったかどうかすら定かではない」
「な……何をおっしゃるのです。あの戦いは神話などではありません。現に、証拠がここにあるじゃありませんか」
「しかし……」
その時、ナイファーは初めておかしいと思った。国が違うだけで、こうも認識が変わるというのだろうか?
「その上、ローゲンがこのネーズルの地を狙っているのは明らかです。トスキールとネーズルの間には障壁と言えるような物はなく、公国が陥ちれば王国もまた危険にさらされます。今までと違って山地の守りも通用しなくなるのです……トスキールとネーズルの運命は共にあります」
「だが断る、と言ったら?」
「いつまでもここから動きませぬ」
「困りましたな」


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