縹(禮晶)完 捌 「あの女人は誰だ?」 敬語を使おうとしない縹だが玉は気にしていなかった。 何故か敬語でなくて良い気がするのである。 「女人?あぁ、義母上…沙華(サカ)様の事か。父上の第二妃で、 私の母の亡き後に正妻となられた方だ。」 「陽という親王よりよっぽど良い御方そうだな。」 「陽叔父は金と権力には不自由していないのだろうが、知性と品格には大分事欠いているらしいからな。」 口の悪い皇太子殿下だ。…本当に面白い奴だと縹は思った。 「義母上は先年、御子を流行病で亡くしたばかりでな…本当にあれはお気の毒な事だった。」 「皇族は身内が自然死すれば喜ぶ者ばかりなのかと 思っていたが……どうやらそうでもないらしいな。」 思わず縹は本音を口に出していた。 「そうだな。それも皇族の真実だ」 皮肉そうに玉は呟いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |