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妖(和麻)完
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 雷と勇人を見ているだけだった天花は二人の間で炸裂した光に思わず目を閉じた。目を開いて天花は目を丸くした。
「雷が消えた!」
天花の目の前には勇人一人しかいなかった。勇人は天花に気がつくと「大丈夫か?」と駆け寄った。天花の傷は天花が妖怪であることから塞がりつつあった。それを見て勇人はほっとしたが天花は勇人の腕に抱えられたものを見て言葉を失った。ぽかんとしてしまっている天花を笑って勇人は言った。
「へへへ、ビックリした?」
勇人が抱えていたのは尾が三つに分かれた猫だった。大きさは違えどまさしく雷だった。雷はすっぽり勇人の腕に収まってしまうほどになっている。
「どうしたんだ? それ」
「やっぱり俺は誰かを傷つけるのはできないから……ただの猫にしてみた」
勇人のお人好しぶりにため息をついた。
「まあ、妖力は消えたみたいだし大丈夫だな」
天花がちょんと小さくなった雷をつついた。そしてしきりに瞬きをしていかにも眠そうな勇人に向って言った。
「強い力を使って体に相当負担がかかったと思うから早く帰れ……って言ったそばから!」
ぐらりと倒れそうになる勇人の腕を天花が急いで掴む。危うく顔面を地面に打ち付けるところだったのに何とも気の抜けた顔で寝息を立てていた。
(勇人は久遠の仮の姿だとしか思っていなかったけど……)
勇人は久遠と違い最終的には雷に怪我を負わせなかった。争いの中で生きる「久遠」とは違う「勇人」らしい結果を選んだ。
(勇人は勇人で、ほかの何者でもないんだな)
勇人の手に中にいる雷をつまみ上げた。
「俺だったら間違いなく葬っていたね。よかったな、命拾いして。感謝しとけよ」
雷はその気はないといわんばかりにシャーと威嚇をした。反省の色が見えない雷を天花は強めに掴み、勇人を背負った。


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