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こねた
キャパ連載夢主で傍観っぽい逆ハー夢
「あたしぃ、桃園メルルって言うのぉ。メルルって呼んでねぇ☆」

ピンクアッシュのくるくるしたセミロングの髪を揺らして仄かな桃の香を辺りに振り撒きながらその女の子は現れた。
可憐なその表情と低めの身長、何よりその整った愛らしい容姿。
鶴姫のように天真爛漫元気溌剌という感じではなく、もっと俗っぽい、合コンのアイドルといった感じで、高校生くらいの年だし、運動部マネージャーとかやっていそうな気がする。
さらにきっとドジっ子でドリンクをいっぱい抱えて部員の所に持って行こうとして渡す直前でこけて、「失敗しちゃった☆てヘ☆」とかやってそうだ。
体育と数学が苦手で、料理は修業中で「卵焦げちゃったよぉ。ぐすん」とかやってるに違いない。
普段はその身長を活かした上目遣いでポイント稼ぎして、いざという時はヒールを履いて顔を接近させて相手をキスしたくなるように仕向けるなんてことをやっていそうだ。

まあ。そんな予想がすぐにできるくらいステレオタイプのぶりっ子が桃園メルルさんだった。そのあざとさがまた可愛い。桃園メルルって偽名だろうか。
僕と同じく現代から来たらしく「あのねぇ、みんなのことわぁ知ってるよぉ。メルルねぇ四百年先の未来から来たんだぁ」とか言っていた。ちょっぴりおばかさんみたいだがそこがまた可愛い。

可愛いし男のツボといわれるものをよく押さえてると感じたから、この子はきっとこの世界でもモテモテになるだろうな。
……と思っていたんだが。

「政宗ぇ、メルル、政宗と一緒にどっかお出かけしたいなっ」
「Oh...sorry,おれは無理だ。真田幸村でも誘ってみたらどうだ?」
「某も鍛練がありますゆえ」
「じゃあ、佐助わぁー?」
「俺様も色々やることあるんだ。ゴメンねー」

なんだかあまり好かれていないようである。
サンデー君なんかは出会った初日に、

「女、貴様が何をしようと我の愛は貴様には傾かぬ。それ以上我の視界に入れば塵も残さず消し炭にしてくれようぞ」

とか言っていた。物騒すぎる。

そんな態度をいろんな人から取られたメルルさんが、僕にその責任をなすりつけるのにそう時間はかからなかった。
僕もイレギュラーだしね。キャラじゃないからはじめからぞんざいに扱われてたしね。

「秋人、アンタのせいでしょ!メルルのためのモブだと思ってたけどアンタも、メルルと同じなんでしょ!男のくせに!」
「まさか!メルルさんみたいな海も真っ二つになるような驚愕の可愛いらしさを持った女の方と僕みたいな平凡な人間が一緒な訳がない。それに、きっとこれは神様があなたに与えた試練に違いないよ」
「試練……ってどういうことよ?」
「紆余曲折を経て育まれた愛はそう簡単には壊れなくなる。つまりあなたがより深く愛されるための物語の伏線の一つなのさ」
「より深く愛される……そうね!そうよね!だってメルルは神様に愛されてるんだもん!じゃああなたもメルルのためにもっと頑張ってよね」
「イエス、マイレディ」

と、なんかノリで協力することになってしまった。なんか鶴姫騙してる刑部君になった気分。
まあメルルさん可愛いしみんなは何か誤解でもしてるんだろう。
その誤解を解けば万事解決だ。

……と思っていたんだが。

「ねぇ、秋人さん。何であんな女と仲良くしてんの?」

メルルさんが寝た後、佐助君が真剣な顔で僕の部屋にやってきた。

「あんな女?メルルさんのことかい。そんな言い方は良くないな。可愛い女の子に向かって」
「……秋人さん、あんなのが好みなわけ?」
「好みなどという問題ではないよ。むしろ何故、君達は彼女を邪険にするんだ」
「……理由なんかないよ。アイツは嫌いだ」

……理由もなしに彼女のことを嫌いだと言うのか。

「……そう。……僕はもう寝るから部屋から出てくれ」
「秋人、さ、ん……?」
「……」
そんな恐ろしい話は聞きたくない。

「秋人さん、……怒ったの?」
「……僕は君を信じてるよ。おやすみ」






そんな感じでメルルさんを擁護しまくってたら、ゲームではモブだった人達が味方についた。
何も悪いことしてない可愛いメルルさんが蔑ろにされるのは可笑しいと感じたんだろう。
メルルさんは初め嫌そうだったが、「神様に愛されてたけど面食いだったから酷い目に合った女」のお話をしてあげたら、「ま、まあ?メルルのための存在であるあなたがそこまで言うなら、メルルも頑張ってあげてもいいけど?」と頑張ってくれた。
これだからおばかちゃんは可愛い。
ゲームの「キャラクター」たちがまだ辛辣だから、たまに不安になってるのも知ってる。
だからそんな時は「今は僕だけで我慢して試練を乗り越えよう。大丈夫。メルルさんなら出来るよ」と抱きしめて甘やかしてあげた。
そうしたら僕はおばかちゃんの所有物から役に立つ所有物にランクアップした。
おかげで周りの「モブ」からは仲の良い兄妹のようだと言われるようになった。
穏和な兄と気の強い妹のようだと。
メルルさんが失言したら僕がすぐにフォローするからだろう。
だから問題も起きないし、ツンツンデレ妹ポジションのメルルさん株は緩やかに上昇していった。

そして「兄妹」という関係が浸透したころ、「キャラクター」たちが接触を図ってきた。
メルルさんを傷つける発言をしようものなら僕は彼女を連れてすぐ立ち去るので、彼らも学習して彼女にも普通に接するようになった。
同時にメルルさんも、僕がいないと人と上手くやれないことに気付いた。
でもすぐ僕にそれについて「どういうことなの」と問い詰めてくれたので、「僕はメルルさんのお助けキャラだから」と返し、満足げに納得させた。

それから僕は徐々に、メルルさんに優しくする人を贔屓するようにした。


そうすればゴールはもう目の前。


逆ハー狙い兄妹のための逆ハー世界の完成である。

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あきゅろす。
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