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10 NOvEL 05
出会ったそいつは赤くて銀色。






そいつは突然、寝室の窓から入ってきた。


『すいませーん。土方さん家の十四郎君いますかー?』


街でよく見る赤い服を着たその男。そう、サンタクロース。
ただ少し違うのは、世に云うサンタの年齢より明らかに下。20代後半、俺と同い年ぐらいだろう。


『土方十四郎は俺だが』


なんでこんな冷静に返答できているのか、自分でも疑問に思う。
こいつがサンタの格好をしているからなのかもしれない。


『・・・・・え?・・・いや、嘘でしょ?資料には6歳って・・・』

『書類ミスじゃねえの?俺26。』

『・・・・・えええええええええ?!っちくしょう!あのダメガネ!!どんな間違いしたら20もマイナスできんだよ!!!』

『・・・おい、何処から来たのか知らねえが今何時だと思ってんだ。夜中の1時だぞ!』

『仕様がねぇじゃん。サンタクロースは夜プレゼントを運ぶもんなんだから』



・・・・・は?こいつは自分が本当にサンタだと思っているのか?・・・・・いやいやいやいや!
それはねえだろ!だって普通サンタって真っ白い髭蓄えた外国のじじいだろ?!
それに比べて何だこいつ!髪なんか白っつーより銀じゃねえか!外人っつーより日本人じゃねえか!!



『・・・・あのさー』

『へッ?!』

『まぁなんか手違いだったみたいだけど、あんたの欲しいもんプレゼントしねえ限り仕事終えらんねえのよ。だからなんか欲しいもん云え』

『はぁっ?!何だソレ!!いきなり窓から不法侵入してきてその言い草は!!!もっといいようがあんだろうが!つーかなんでサンタが若いんだよ!普通もっと年上のじじいだろうが!!!』

『ふっ、甘いな。サンタが一人だけなわけねえだろ。俺は日本支部のサンタなんだよ。一国に一人サンタはいるんだよ。偶々有名になったのが海外のじじいだったんだよ』



何だそのどや顔は。そんなサンタ界の常識知らねぇよ!
第一欲しいものって急に云われてもわかんねえよ!
そんなもん今はとくにねえし・・・・欲しいもの・・・・









『・・・休暇とか?』

『いや、リアル!!!なんかもっとモノ的なのはねえのかよ!!どんだけ?欲しいものが休暇とかどんだけ忙しいの?!』

『っせぇな、色々とあんだよ!!i一年に一度働けばいいてめえらと違ってな!』

『てめっ、サンタなめんな?!その日のために一年間ガキ見張ってなきゃなんねえんだよ!疲れんだよ!!もういいから何か欲しいもん云ってくれよ!お願い!!お前でラストなんだよ!!』

『知るかぁ!んなこと!!・・・じゃああれだ。空飛んでみてえ。ソリとかあんだろ?それ乗せろよ』

『あ?そんなんでいいのか?』

『おう』


この対応的に本当にサンタらしい。

上着を羽織ってサンタについていってみると、そこには見事に二つの車輪がついた・・・・・・・・






『バイクじゃねえかよ!!!!』

『今どきソリなんて古ぃんだよ!今じゃバイクが主流なんだよ!』

『だから知るかぁ!!』

『んだよ、っせぇなあ・・・さっさと乗れ!』



予備のヘルメットを装着し、後部座席に跨ると同時に、ふわりと浮遊感。
足元を見れば、本当に飛んでいる。



『ほら行くぞ。しっかりつかまってろ』

『おう』


そう云うと、サンタのバイクは走り出した。

クリスマスとかサンタクロースの雰囲気もあったもんじゃねえけど、これはこれで面白い。

気付けば街が一望できる高さまで上っていた。



『おまえさー』

『あ?』

『クリスマスなのに一人なわけ?普通恋人とかと一緒にいねえ?』

『あー、いねぇな。恋人も、好きな奴も』



なんで見ず知らずの奴にこんな話してんだ。



『ははッ、さみしい奴』

『るせぇ』



それから、他愛もない話で笑いながら、街をぐるっと一周して家路に着いた。

時刻は既に午前2時を過ぎている。



『げっ、もうこんな時間じゃねえか』

『明日も仕事か?』

『ああ、ったく。めんどくせえ上司と部下抱えると大変なんだよ』

『お疲れさん。まあ頑張れよ』

『おう。・・・・・今日はありがとな。案外、楽しかった』

『あー、俺も案外楽しかった』

『・・・・・・・』

『・・・・・・・』



何故か沈黙が続く




『あ――・・・のさ』

『あ?』

『また来てもいい?』


意外な申し出だった



『何で』

『おまえといると、なんか楽しい』

『っ・・・』



言葉につまる。寒さではない何かが、俺の頬を熱くする。


『だめ?』

『別に、いい、けど』

『やった。・・・じゃあ俺行くわ』

『・・・・・次はっ』


バイクに手をかけたそいつが、振り向く。


『ん?』

『・・・・・次は、いつ来るんだよ』

『そうだな・・・おまえの休暇を見計らって来るよ』

『・・・ああ』



笑いながらそう云って、サンタは静かな街へ向かって――――



『あ!』

『っ、なんだ?』

『忘れ物』

『何をっ・・・ッ!』


振り向いて、俺に近寄り、短い、短い、口付け。



『おやすみのキス』

『な・・・なっな、な・・・』

『じゃあね、十四郎』


そう云い残し、去っていく赤いそいつ。




男にキスをされた。
でも嫌ではなかった。

・・・待て、嫌ではないって何だ俺。
俺はホモじゃねえし、バイでもねえし。ほんとそういう趣味はまったくねえはずだし、普通嫌なはずなのになんであいつだと嫌じゃねぇんだ?


『何なんだあのサンタ・・・』




そういえば名前も聞いてねぇや。



次来たときに、問いただしてやる。

今のキスの意味と



俺を困惑させる、





銀色のサンタの名前。



















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