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10 NOvEL 05
I love you from my heart,






これで何度になるだろう。


云えない言葉は「おまえが好きなんだ」というありきたりな言葉。

生憎俺たちは会えば喧嘩ばかりするもんで、肝心なことに触れられねぇ。


広いようで狭いこのかぶき町で、幾度となくあいつが女をつれて歩いている所を目撃した。
それだけで、心が締め付けられる。


気付いて欲しい。
でも気付かれたくない。

拒絶されたくない。


今のままは嫌だけど、会話が出来なくなるのはもっと嫌だ。


高まるのは「好き」という気持ちばかりで
それを隠すために勇気を消費してしまう。


こんな俺を、人は臆病と罵るだろう。

そんなこたぁ自分でも解っている。



嗚呼、ほらまた―――





『銀さん、今付き合ってる人とかいるのー?』

『あ?いねぇよー。誰か相手してくれる娘いねぇかな?』

『あら、じゃあ私が相手してあげるわよ?』

『まじでかっ』



やめろ。

そんな所、見たくもない。




でも、足が、身体が云うことをきかねぇ。
まるで、金縛りにあったみてぇに、その二人から目が離せねぇ。 




女の方があいつの腕に絡みつく。



嗚呼、嫌だ。
俺のものでもないのに、嫉妬の心が黒い渦になって、俺を飲み込もうとしやがる。










『やめろッ!!!』



『っ?!』

『何?!』







気が付いたら、そう叫んでいた。

周りが俺を見つめる中、あの二人の視線がやけに痛い。



青ざめるような、けれど羞恥で赤くなるような気持ちに見舞われ、動かない身体を叱咤し、必死でその場から走り去った。




さっきの叫びは何に対して―――否、誰に対してなのか。己の心か、はたまた二人へか・・・。
自分でもわからねぇ。


だけど、必死で走っている今、俺の双眸から零れる涙の意味はわかる。



俺は、本当にあいつのことが好きなんだ。




そりの合わなかったあいつが、気に食わなかったあいつが。
いつの間にか、俺をこんなにも苦しめる、愛おしい存在になっている。



『ちく、しょう・・・・・』



涙と全速力で走った疲労とで、いつの間にか足は止まっていた。
周りには既に、街の喧騒はない。









もう、諦めた方が良いのだろうか?

そうすれば楽になる?


こんな辛いだけの片思いは捨てて、今まで通り莫迦みたいに喧嘩やってる方が楽かもしれねぇ。




もう、疲れた。







『ぎん・・・とき・・・・』



自然、零れるその名前。今初めて口にしたあいつの名。










『・・・・なんだよ』

『っ!!!』



振り返れば、息を切らした居るはずのない銀髪がそこにいて、呆然とする。



『いつもは下の名前で呼ばねぇくせに』

『っ・・・・んで・・・・・』

『あ?』

『何で、おまえが居んだよ・・・っ』



やめろよ、期待させるようなことはすんなよ。
もう止めたいんだ。心が痛いんだ。疲れたんだ。



『泣いてたから。普段泣かねぇおまえが』



お願いだ、そんな優しい言葉を与えるな。



『それはっ・・・おまえの所為、だ・・・・』

『俺?何かした?』



嗚呼、云わなくていい筈のことまで口にしてしまった。



――・・・もういっそ、全て云ってしまおうか。
どっちが楽になるだろうか・・・・。


諦めと、告白。




『なぁ、どうしたんだよ、おまえ』



諦めたら、気持ちを隠してくれたら、こいつとの関係は保ったままでいられる。
拒絶されることも、無い。




『・・・・万事屋・・・・。』




告白したら、今の関係はきっと崩れる。絶対に、拒絶される。
淡い期待なんて持っちゃいけねぇ。



『何だよ』





俺は










俺は









『俺、は・・・・・』

『・・・・・』






















『おまえが、好きだ』











云って、しまった。
何故俺は告白を選んだのだろう。自分でも解らない。




さぁ、ほら。拒絶しろ。わかってるから。
俺なんか、何とも思ってねぇことくらい。



そう思ったら、また涙がでた。


今は泣いちゃいけねぇと思っているのに、それは止まらねぇ。次から次へと、零れてくる。






不意に、視界が塞がれた。

抱きしめられたのだと理解するには、少し時間を要した。




『何、で・・・・・』



同情だったら止めてくれ。




『十四郎』

『っ・・・・・』




『俺はお前のこと―――・・・』


































『        』
















止まりかけた涙が、また溢れた。























あとがき―――




一周年記念小説第一弾でございます。
読んでくださった方、有難う御座います!!!!

いやぁね、リクに「少女マンガ風の乙女な土方さん(片思い)」と云うことだったので・・・・・・・・・・



少女マンガ風になっていたでしょうか???!!!

楽しく書かせてもらいましたが、なんかgdgdなかんじ・・・?

内容はあるバンドの歌からインスピさせていただいています。

あともう一作あるので、宜しければそちらも読んでみてください^^

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あきゅろす。
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