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お題
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5 淡い気持ちは茨に消えて





このどこかのとある億ションの最上階の一室は僕と見張り役の男だけには剰りにも広すぎるものである。と言っても僕の生活範囲は限られているしそんなの何の問題もない。ただ、息苦しい。

「ねえ」

「はい」

付かず離れず僕を監視するのが仕事のこの男――何て名前だったか忘れちゃった――は僕の問いに酷く簡潔に応じた。彼は四人目の見張り役だ。前までの奴はみんな馬鹿で糞みたいな奴ばかりだった。今のはまだ前の奴らよりはマシ。

「セックスしよっか」

「―――は?」

男のリアクションに思わず声を上げて笑っていた。糞真面目に生きてきたのだろうか、あまりこの手のことには免疫がないみたいだ。

「セックスだよセックス。結合。交合。お分かり?」

くすくすくす。面白い玩具が見つかった。これでまた少しは暇潰しになるだろう。って言っても“あいつ”が帰ってくるまでなんだろうけど。



「あ、あの」

この情報を把握できずに狼狽える男を心内で嘲りつつも僕は男の鍛え抜かれた身体に手を伸ばした。情事を感じさせるような手振りで身体を弄り、男の逞しい身を寄せた。

「ねえ……」

熱い吐息を零し男に縋る。一時も身体を弄る手は休めはしない。おかしくも男の身体はたったそれだけでカチンコチンになっている。

「し、祥一様……」

顔面真っ赤で子どもみたいだ。僕よりも十は年上の男が十も下の奴にいいようにされて、面白い。

「…ちょーだい…………ほしいの……」

男の下半身に手を伸ばし優しく撫でる。既に少し勃っているのが布越しに伝わってきた。

「い、いけません、離れて下さいっ」

僕の肩を掴んで引き離し、男は説得を始めた。無駄だというのに。
男が僕に乱暴できないのをいいことに僕は男にしがみつく。
しっかりと掴まえたら後はこっちのものだ。男に僕をどうにかする権限は下されてない。






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