姫と執事の話
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それから一時間ほどたってから、リーシャの部屋に呼ばれことの一部始終を聞いた、アリアと同じくリーシャ王女付きで執事のサンジェスは、眉間のしわをこくしたままで口を開いた。
「それで、何か俺に出来ることはあるのか?」
「いいえ。とくには。しかしご安心下さい。調べたところ、危険なものは見当たりませんでした」
レイの言葉に、ゆっくりと肩の力を抜く。
「解毒の薬も作れないこともありませんが、完成する前に元の姿に戻られるでしょう」
「時間はどれくらいかかるんだ?」
そうですね、と窓の外に目を向け、太陽の位置を確認する。
「月が一番高くにくる頃には戻られるかと思います」
「そうか」
サンジェスの眉間にしわがなくなったのを見て、アリアがポン、と手をうった。
「というわけでサンジェスさま。後はお任せいたしますっ」
「……はっ?」
「そうですね。少々心苦しいですが、私は姫ぎみのお側を離れられませんし……」
「ザンネンながら、わたしは今日やることが多くて……」
「だからってなぜ俺が……!?」
「サンジェスさまの仕事は部屋で出来るものばかりですから」
だが……! と詰め寄ると、アリアは笑みを崩さぬままに声を低くした。
「アナタ。姫を一人にするっていうの? お体が小さくなって“心細い思いをなさっている”姫を」
それには返す言葉もみつからず、ふいとリーシャに視線を向けると、その目が不安そうにゆらめいて見えた。
「――……わかった。ただしお前の仕事が終わるまでだからな」
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